封切り二日目。
席数290の【CINE4】の入りは八割ほど。
客層はこの手カテゴリーの常として
かなり高齢者に振れている。
原作、とゆ~か元ネタは
2012年11月20日発行の『山本博文』による〔「忠臣蔵」の決算書〕。
そのタイトルに惹かれ発売直ぐに買い求め即刻読了。
そして冒頭に書かれている「はじめに」からもう驚きの連続、
・『大石内蔵助』が「預置候金銀請払帳」として決算報告を遺していたこと
・討ち入りまでの総経費が六百九十七両(現在の貨幣換算で約8,400万円)だったこと
・研究者の間では良く知られた資料であり「赤穂事件」関連の論文等ではしばしば引用されていること
などなどで、まぁ知らないということはつくづく恐ろしいことだと改めて感じた次第。
勿論、そこに書かれていることだけを淡々と作品化しても映像的には弱いので
虚実ないまぜにしてエンタメ性を高めており、その辺の匙加減が監督の『中村義洋』の技量。
特に狂言回しの『大石内蔵助(堤真一)』の造形にそれは顕著で
歴史ものでは極めて優れたリーダー像が蔓延っているけど、彼だって一人の人間
ましてや事件が起きたのは四十代前半なのだから煩悩や誘惑も多かっただろうし。
他にも複数ある見せ場のうちでは、入るを量りて出ずるを為す事務方と
考えもなく金を使う一方の武闘派方の軋轢表現も今までにはなかった描写。
繰り返される一連のやり取りをきちんとギャグに昇華させ
立派な笑いどころに仕立てている。
討ち入りが成るや成らざるやの瀬戸際で
その帰趨を決する要素の一つに資金調達があったとの視点が極めてユニーク。
12月2日の最終会議の場面が、その最大の山場になるわけだが、
そこでは金額表示を併用した表現がこれまた斬新。
示される数値が上下するだけで、これほどの笑いが取れるなんて
なかなかにない仕掛け。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
刃傷や討ち入りの舞台こそ江戸も、主要な人物の出身は西国なのだから
全編を関西弁で押し通しているのもなかなかのアイデア。
それもあってか制作委員会に名を連ねる「吉本興行」の協賛もこれありなのだろう
端役に至るまで贅沢に役者や芸人を使えているのもまた余録。