封切り二日目。
席数150の【SCREEN4】の入りは八割ほど。
海外であれば『ロバート・キャパ』、日本人であれば
『沢田教一』や『一ノ瀬泰造』。
何れも戦場で命を落としたカメラマン。
本作の主人公『メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)』は
記者ではあるもののやはり紛争地帯を駆け巡り、そこで命を散らしている。
ましてや彼女は、その前に左目を失明する大怪我を負いながらも
危険な場所へと足を踏み入れることを止めない。
そこまで彼等・彼女等を駆り立てるモチベーションは何処に在るのか?
物語は時系列に沿って紡がれる。
『コルヴィン』が取材する場所はそのまま
独裁者やあるいは民族対立により、罪のない市井の民が
塗炭の苦しみを嘗めさせられる今世紀の歴史に重なる。
具体的なエピソードを用いながら展開されるので、
観ている側も今夜の悪夢に襲われそうな残忍な情景。
それを直に目の当たりにする本人は
あまりの悲惨さに、安全な本国に戻って来ても
毎夜の様にうなされる。
それでもおそらく、彼女にとってはまだまだ足りないのだ。
報道がすぐさま抑止になるわけではないにしろ、
大国の思惑が絡む紛争に、小さいながらも楔が幾つも打ち込まれれば
やがては大きな躍動となって世情が変わる確信を持っている。
今ここで伝えなければ、死んでいった者達は報われないし、
これから先の被害者を少しでも減らせるかもしれない。
ただ一方で、必ずしも大儀だけの人ではなく、
弱音も吐くし、有り得たかもしれない過去に未練もある。
が、自分の進んできた路に共感し、
跡を継ぐ者が必ず現れるとの信念の下に、伝え続けたメッセージは
やがて世界を変える力を持っているに違いない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
主演の『ロザムンド・パイク』の
まさに 渾身の との表現が適切な
演技が素晴らしい。
心の底にわだかまる思いを、抉り出し
止揚し、観る側に叩き付ける。
イマイマの日本で、この味を出せる女優さんは、はたしているだろうか。