RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

台風家族@TOHOシネマズ川崎 2019年9月14日(土)

封切り九日目。

席数112の【SCREEN8】の入りは九割ほど。

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台風の襲来時には、何かしらの事件が起きることと相場は決まっている。

相米慎二』による〔台風クラブ〕がその好例。

もっともこの作品は、そのもの自体が事件だった上に、
工藤夕貴が』や『三浦友和』が演技の幅を大きく広げた一本でもある。

同様に本作は、主演の『草彅剛』が更に境地を開き
任侠ヘルパー〕⇒〔まく子〕に連なる
駄目な大人を余すところなく好演している。


もっとも来場者の過半を〆る
『剛』くんファンと思われる中年のおばさん達にとっては
想定外の役作りではなかったか。

あまりにも下品で粗野。
(理由はそれなりにあるものの)目的の為なら手段を選ばぬ独善者。

それをベースにした数多のシーンでは、
どう考えても可笑しくてしょうがないのに
くすりとの声も上がらず、戸惑っている空気が芬々。

独り大声で笑っている自分が
全く周囲からは浮きまくりだったことを
正直に記しておく。


両親の葬儀のために、四人兄弟が実家に集まる。
その送り方も既に訳ありな上に、親子間と兄弟間の確執が次第に露わになる。

設定された仕掛けと
構造自体も、かなり凝っており
ストーリーは二転三転、複線もきちんと張られており申し分なし。

中にはベタなお涙頂戴場面もあるにしろ、たぶん確信犯。


監督の『市井昌秀』が信奉していると思われる
過去の映画へのオマージュ、或いはコラージュが散見され、
記憶を楽しも要素も多数盛り込まれている。

中でもラストシーンは
ゴダール』の〔気狂いピエロ〕のまんま引用。

発せられた言葉は、第四の壁を打ち破り
観客の我々への問いかけだろう、もっとも、
かなりのシンパシーを感じさせるものだけど。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


嵐の外へ主要人物達が出て来るシーンを
スローモーションでとらえたり、
車輛が一台だけなのに緊迫感のあるチェイスをさせたりと
外連味も満点。

さすが〔箱入り息子の恋〕〔僕らのごはんは明日で待ってる〕を
撮っただけのことはある(除く〔ハルチカ〕)。