RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

JUNK HEAD@TOHOシネマズ川崎  2021年5月2日(日)

2017年の制作ながら、本邦での封切りは今年の3月26日。

【川崎】エリアでは「チネチッタ」単館上映のハズも
コロナ禍で新作の公開が無くなり
当該館でも急遽上映を開始した、との流れかな。


席数112の【SCREEN8】の入りは六割ほど。

驚いたのは、
幼稚園~小学校低学年の子供を連れたお父さんが複数居たここと、
終映後にその子供たちが
「面白かったね。また観たい」と、感想を宣うていたことで
まさに後生畏るべし。

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天空の城ラピュタ〕の『シータ』がそうであったように、
高貴な者、或いは統べる者のこの世への現れ方は、
天空からと相場は決まっている。

しかし彼女のそれが、ふわりと形容できるものだったのに比し、
本作の主人公のケースはちょっとした手違いにより、
なんとも酷い有様に。

身体の頭部だけが目的地に落ち、その後は
有り難くない名前を付けられたり
そんざいな扱いを受けたりと散々な目に。

貴種流離譚も、最初からここまでの試練は
なかなか類例がないんじゃ、と
思わせる。


遠い未来、
人類は不老不死を得た代償に生殖能力を失う、
一種の等価交換。

一見、薔薇色の世界も、けして不死身では非ず。
昨今のようなパンデミックには極端に弱く
絶滅の危機に瀕してしまう。

そこで思い起したのが嘗て自分達が創造し、
そして棄ててしまったモノ共の存在。

「マリガン」は地下開発の為に造られた人工生命体。
が、やがて進化し自我を持ち、人類に反旗を翻し
下層の世界を乗っ取ってしまった過去。


でも、彼ら彼女らなら、
今でも生殖行為を行っているのではないか。

しかしそこは、今となっては未踏の地。

探査の為に派遣された主人公が目にするものを
我々も共時し体験する。


元々は人類と同一の遺伝子であったはずなのに
コピー時に繰り返されたエラーにより
イマイマ存在するのはクリチャーとも称したくなるほど
多種多様に変容した生き物の数々。

カンブリア紀の生物の如く、
時としてグロテスクささえ覚えるそれは、
弱肉強食の世界に蔓延る。

本来の体を失い、加えて落下時のアクシデントの為
一時的に記憶すら無くしてしまった主人公は
好むと好まざるとにかかわらずその渦中に巻き込まれ
艱難辛苦を味わう。


一方でそれを助ける者も現れとは、
英雄譚ではお約束事。

百分ほどの尺では到底語り尽くすことを得ず、
本編でのお話は To be continued と相成る。


旧来からあるヒロイックファンタジーを根底に、
やや既視感のある造形ではあるものの
登場させる被造物の面では空想の翼を広げ、
山あり谷ありのストーリーに存分に膾炙させる。

主人公の設定が特殊の為、
彼が遭遇する危機も常のケースには非ず、
凡百の想像を超えている。

時としてファースとも形容すべき苦難ながらも
観客の側の興奮は終幕迄途切れることはない。


もっともエピソードの幾つか、例えば
「ドラゴンスネーク」から吐き出される『R2-D2』を
彷彿とさせるシーンもあったりで。

ただそれが興を削いでいるかと問われれば
そこまでとは言えず。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


更に驚くべきは、本作が七年もの歳月を掛け、
ほぼほぼ独りの手により生み出された、
偏執狂的な妄念の産物であること。

エンドロールを見れば、
鑑賞中に持った疑念の数々
~ホントは何人で創ったんだろう、とか
セットや登場人物の実際の大きさはどれほどだったんだろう、とか~は
かなり明らかに。

が、それは、制作のほぼほぼ全部を担った『堀貴秀』の
労力の一端にしか過ぎず。

待望する続編を目にするのは、
果たして何年後になるのだろう。

過剰に頻出する男根のモチーフが
何の前触れなのかの回答も含めて。