RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

万引き家族@チネチッタ川崎 2018年6月23日(土)

封切り三週目。

席数407の【CINE11】の入りは八割ほど。


イメージ 1



監督の『是枝裕和』がここ数作で決まって取り上げる
「家族って何だろう」とのモチーフの集大成と言えるかもしれない。

特に「血の繋がり」が家族を家族たらしめているのか、とのテーゼは
そして父になる〕との近似性を感じる。

ただそれを言ってしまうと、
夫婦に血の繋がりはない訳で(愛情は、たぶん有る)、
じゃあそれは家族じゃあないんですか、
とのハナシになっちゃうし。


直近でも幾つもの痛ましい事件が起きている。

物語の発端はそれと同様、虐待を受けている幼女を
主人公の家族がまさしく 拾う ことから始まる。

いみじくも作中で登場人物達が語っているように
「拾ったんです。他に捨てた人がいるんじゃないですか」との科白は
イマイマの日本の状況を鑑みた時にぐさりと刺さるものがある。


一見家族に見える一つの集団が
実は他人同士の寄せ集めだったとの仕掛けは
特に珍しくはないし類例もある。

が、一見上手く運営されている様に見える共同体が
解体されるきっかけを作ったのも新たに拾われた幼子であるのは示唆的。

そしてサンクチュアリから引き離されてしまった彼女の将来に
昨今のテレビ報道と同じ結末を予想するのは
あながち間違ってはいないだろう。

最後のシーンで彼女が向ける視線の先にはあるのは
希望なのか、ただの期待なのか。

できれば前者であって欲しいと切に思わせてしまうのは
演出の上手さ。


それ以外も含めて、本作は細かい描写が節々に効いており、
観る者の心をぐっと締め付ける。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


日本でも貧困は連鎖し、虐待も連綿と受け継がれる。

したり顔で主人公達を問い詰める警官の口調は
正論ではあっても現実を解決するきっかけにはまるっきりなっていないことが
現代が孕む病理の深さを再認識させる。