RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

彼女がその名を知らない鳥たち@チネチッタ川崎 2017年10月28日(土)

本日初日。

席数244の【CINE7】の入りは七割ほど。


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原作者の『沼田まほかる』は
最近流行の所謂{イヤミス}の女王と称されているらしい。

しかし本作に限っては、どこがそうなのかがさっぱり判らない。

ってゆ~か、『湊かなえ』をも{イヤミス}にカテゴライズしてしまうなんて
ほとんど理解不能

ラべリングのしすぎじゃね?と
正直思ってしまう。


たしかに出だしは、鑑賞者の側に感情移入させない描写が連続。

主人公の『十和子(蒼井優)』はほぼほぼクレーマー、
対応不能なことにあれこれと難癖をつけまくる。

オマケに家の中は荒れ放題で、お金も含め家事全般の全てまで
同居人の『陣治(阿部サダヲ)』に依存している。


一方、その『陣治』はと言えば、たしかに所作は下品で
風采も上がらない。

それが負い目になっているのか、『十和子』に言われ放題で
反駁することすらしない。

男女の関係もなさそうだし、
そもそも二人がどうして奇妙な同居生活をしているからして不明、
ましてや束縛するわけでもないのに、『十和子』の一挙手一投足に
異常なほど執着する理由が、単に愛情によるものだとすれば
それはかなり偏執狂的な思い入れにしか見えない。


しかしその何れにも、隠された裏の側面があることが次第に明らかになり、
全てが氷解した瞬間には、そのあまりの純愛に
観ている側は思わず涙する。

幾つかの謎は、全て事前の予定調和を裏切るカタチに帰結し、
タネを明かされれば、成る程ね、ではあるものの
先に挙げた不安定極まりない描写や、
恐れににも似た『陣治』の過剰さの意味が理解される。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


そしてラストの一連のシークエンスについて言えば、
造りの巧さは勿論のコト、ココロがとめどなく切なくなってしまう。

サクリファイスとの表現がピッタリ嵌るほどの愛情の表現は
やはりやるせないものの、彼にとっての彼女は
それ程の価値がある女性だったのだと。