RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

永い言い訳@TOHOシネマズ渋谷 2016年10月14日(金)

本日初日。

席数234の【SCREEN5】の入りは六割ほど。


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本作で『本木雅弘』が扮するのは、
過去彼が演じてきた穏やかな人間とは正反対の
かなり鼻持ちならない男。

オープニングからそのエキセントリックさが爆裂するので、
観客は面食らい、戸惑う。

それでも不快感を持ちながらも、
逆に一気に物語の世界に取り込まれてしまうのは
西川美和』の脚本と演出の冴えだろう。


流行作家『衣笠幸夫』は、テレビにも出演する
所謂「文化人」。

しかし私生活の彼は
なまじ名前が売れてしまったためか、
自意識過剰でスノッブで高慢。

結婚して二十年も経つ妻をも見下すように扱い
あまつさえ年下の若い女『福永(黒木華)』と不倫さえする始末。


そんな矢先に、バスの事故で妻の『夏子(深津絵里)』が
突然亡くなってしまう。

人生でそうはない悲しい事態に直面しても
彼は涙の一筋さえ流せない。

荼毘や葬儀を淡々と行い、
有名人の性でマスコミの前では辛そうな態度は取るものの、
自宅に戻れば日常から一人の人間が消え
生活が不便になった程度のことしか感ぜず、
妻との思い出に浸ることも無い。


そんな折り、ひょんなことから
週のうち幾日かを、幼い兄妹と半日を一緒に過ごすようになる。

そこでの彼は、今まで我々に見せたのは正反対の
優しい態度。
子供の我儘にも真摯に向き合い、次第に父親よりも信頼を得て行く。

一体どちらが『幸夫』の真の姿なのだろう。

ジギルとハイドの様に、
相手によって態度が変貌する主人公に我々が混乱しているのも束の間、
幾つかの事件が起き、彼は更に変わらざるを得なくなる。


とは言うものの、やはり観客は、最後には
人の情の有り難さを感じさせる大団円を期待するもの。

亡くしたことで初めて気付くこともあるのだと
それは日々を何気なく過ごす我々にとっても共通するテーゼなのだろう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


監督の『西川美和』は些細なエピソードを何気なく提示することで
裏に隠れているより大きな事実に膨らませて判らせる手管に長けているのだが、
それが本作では少々空回りしている印象。

自身が優位に立つことで、相手から愛されようとしていたのが
実はまるっきり間違っていたことを悟る複数の場面や
テレビに出ている自分は、実は大衆に消費されるだけの存在で
代替は幾らでもいるのだと気付くシーンがそれにあたるわけだが、
ちょっとみには刈り込み過ぎと思える箇所が幾つか。

なまじ主人公の振れ幅が激しいだけに、もう少し丁寧に説明した方が良かったかも。