RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

帰ってきたヒトラー@TOHOシネマズ新宿 2016年6月18日(土)

封切り二日目。

席数184の【SCREEN5】は満員の盛況。


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いや~笑わせて貰った。
オープニングからエンディングまで笑いっぱなし。

しかし次第に薄ら寒いモノが
背筋を流れて行く。

これってホントはけして笑えない、実は怖いオハナシだと。


個人的には興味のある人物なので
関連書籍はできるだけ当たるようにしている。

直近では〔ヒトラーの秘密図書館〕あたりかな。

なので、それなりの知識は有るつもり、
本作での笑い処も多いかもしれない。


拳銃自殺を遂げた後、ガソリンをかけ焼かれた『ヒトラー』が
現代にワープし生き返ったら、とのモチーフは
他の人物ではアリかもしれないけど
独逸国内でこれをやったのはかなり凄いと思う。

なんてったって〔マインカンプ〕さえ禁書で
読んでいない人の方が多いわけで、実際
本編中にも、それを嗤うシーンが盛り込まれている。


作品のもう一つの重要な要素は
主演俳優である『オリヴァー・マスッチ』の
あまりの長身はさて置き、外見を酷似させているコト。

過去のそっくりさんと比べても
その似具合は抜きんでていると思う。


その特性を行かすため、本作では意図的にドキュメンタリータッチの手法を多用する。

街頭に総統の衣装のまま繰り出して、多くの人と対話をさせる。

そこで浮かびあがって来るのが、欧州の優等生でありながらも
移民であったり、若者の失業であったりと
同国が抱える数々の問題。


実存の『ヒトラー』が政権を獲ったのも
そのような庶民の不満を掬い上げ、
政策演説に盛り込んだからではなかったか。

ましてや、此処では、反ユダヤ主義と言った側面を除けば
非常に滋味に満ちた魅力ある人物として描かれている。


そして、ラジオや映画、出版等の
タイムラグや隔靴掻痒感のあるメディアだけだった往時とは異なり
速報性や共有性のある媒体が蔓延る現代では、
彼のプロパガンダがより敷衍し易い環境になっていることも
皮肉交じりに描かれる。


ヒトラー』は最初から独裁者だったわけではなく、
民衆が選んだ訳で、なので
ことある毎に「民主主義」を口にする。

権力者にとっては、なんとも都合の良いシステムなのだ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


ポピュリズムの広がりは、なにもアメリカに限ったことではなく
現代の日本の国政に於いても、東京都でも同様だろう。

口当たりが良く、当座の不満を解消して呉れそうな候補者や政党に一票を投じる。
それは人気投票となんら変わらない。

その結果としてどうなったかの事例を
繰り返し見ているハズなのに懲りることも無く
また同じ過ちを犯している。

ヒトラー』は何時も我々の中に
同衾している存在なのだ。