封切り三日目。
席数154の【CINE9】の入りは六割ほど。
主演の『ボブ・オデンカーク』が、
「チビ太のおでん」を持ちながら
「Mr.ODENと呼んでくれ」とのしょうもない予告編や
〔ジョン・ウィック〕の脚本家が制作陣に参加との煽り文句は
ああまたこのパターンの物語りかと逆に作用し
観ない優先度を上げていたのに、
「IMDb」は7.4、
「Metascore」は63との
まずまずの評価。
思いを翻して劇場に足を運んだ結果は大正解。
ここ暫くの中で一番頭を空っぽにして楽しめた一本にして、
問答無用のカタルシスを得られた一本。
コロナ禍で鬱々とする空気を、見事に吹っ飛ばしてくれる。
それにしても『ボブ・オデンカーク』あまり聞かない名前。
当年とって58歳、
身長も1m75㎝とさほど高くなく、
まさにこの役の為に誂えられたよう。
俳優よりも制作サイドで多くの作品に携わっているようで、
本作でプロデューサーとしての任をしっかりと果たしている。
プロット自体はありがち。
引退した※※のプロが
ひょんなことから抗争に巻き込まれ、
家族や自身を守るため
闘いに身を投じるとの流れ。
本作の場合、ダメダメなオヤヂとしての一週間の生活を
冒頭繰り返し見せることで
中盤以降の躍動振りとの対比を鮮明にしているは一番の構成。
前半生でしていたことは最後まで曖昧にしながらも、
それなりに重要なポジションであったことを暗喩する幾つかのシーンは
どれも深刻にせず、半分のギャグを噛ませながら提示するお約束の繰り返しは好ましい。
ド派手なガンエフェクトやブービートラップの総棚ざらえは、
既視感も満載だけど、逆の意味で心地よく身をゆだねられる。
意表を突く援軍や危機から脱するアイディアも秀逸なのに加え、
こちらの側は誰も不幸にはならないだろうとの予測も
安心感を以って見守る保障になる。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
が、根底にあるのは主人公である『ハッチ・マンセル』の
家族や隣人への愛情とヒューマニズムが溢れる人となり。
この造形が無ければ
随分と殺伐とした一本になってしまったろう。