RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

プリシラ@TOHOシネマズ日本橋 2024年4月13日(土)

封切り二日目。

席数143の【SCREEN9】の入りは四割ほど。

 

 

現時点の評価は
IMDb:6.5
Metascore:79
個人的には一般人評価の「IMDb」より
評論家筋の「Metascore」を偏重の方針。

とは言え「IMDb」も7.0以上は善し
(「Metascore」は70以上)の基準としているので
本作はそれなりに事前期待を持っていた。

観終われば、
幼少期から一人の女性を演じきった『ケイリー・スピーニー』は
素晴らしいの一言に尽きはする。


プリシラ』の著作〔私のエルヴィス〕を底本とした、
ソフィア・コッポラ』による脚本を含めた監督作。

彼女の作品ではなにがしかの「喪失」が描かれることが多いが、
それは今回とて例外ではなし。


プリシラケイリー・スピーニー)』14歳、
エルヴィス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)』24歳の出会いののち
二年後に始まる同居生活(結婚は八年後)は
傍目からはオママゴトのよう。

プレスリー』はそれなりの年齢も
世間知らずなのは〔エルヴィス(2017年)〕でも描かれた通り。

一方の『プリシラ』も憧れが昂じてそのまま夫婦になったのが透けて見え。

象徴的なのが、彼が彼女にドレスを誂える場面。
「メンフィスマフィア」を引き連れ店に繰り出し、
とっかえひっかえ試着させるのは「バービー人形」への着せ替えを楽しむのと近似。

服の色にとどまらず、髪の毛の色、アイメイクにまで細かく指示を出す。

にもかかわらず、男女が一つのベッドに同衾しながら
就寝時には睡眠薬を服用。
「時が来るまで」と一切手を出すこともなく数年が過ぎるとの異様な日常。


そうした二人の日々を、監督は醒めた眼で見つめ、
起伏の無い平板な語り口で描写。

子まで成した結婚生活は、結局は六年弱で破綻も、
そのときの涙ですら、どこか他人事の悲しさのように感じさせてしまう。


離別の要因は余人にはうかがい知れぬが、
こと音楽には革新的だった『プレスリー』も
家族関係については古風な
(男は外で女は家。日常生活で女は男に従うべし、との)考え方から、
プリシラ』が長ずる連れ自我も芽生え
外の世界にも自身の居場所を求めるようになったこともあるのでは。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


断ち切られたような映画の終焉の後では、
繰り返される薬の常用と、仕事のストレス、親族やマネージャーへの依存が
世紀のスーパースターを早世させたのは周知の通り。

対して『プリシラ』は、抑圧から解き放たれたように、
その後は女優としてもビジネス面でも成功を収める。

離婚は初恋の終わりともに、彼女の自立の始まりでもあったのだ。