RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

キャラクター@TOHOシネマズ渋谷  2021年6月12日(土)

封切り二日目。


都内の映画館を利用するのは久しぶり。

席数297の【SCREEN3】は、
一席おきの案内なので
実質150席弱。

それが満員の盛況で、
客層は若めのカップルと
女性の二人連れが圧倒的。

やはり場所柄なのかなと
思ったりもする。

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画力は頭抜けているのに、
登場させる人物の造形が魅力に欠けるため、
賞には引っ掛かるものの
今一つ成り切れない漫画家の卵『山城圭吾(菅田将暉)』。

ある夜、アシスタントに付いている先生の命で
ロケハン宜しく家屋のスケッチ向かった先で
シリアルキラーによる一家四人の惨殺現場に遭遇してしまう。

そこで、たまたま見かけた犯人と思われる人物を
主人公のモデルにした漫画を描いたところ
これが大ブレイク。
一躍、時代の寵児になるのだが・・・・。


『両角(Fukase)』と名乗る犯人の存在は
最初から明らかになっている。

なので、警察がどうやって彼に辿り着くのか。
加えて『圭吾』がどう関わって行くのかが
サスペンスの見どころ。

そこに、かなり重要な要素として
漫画作品そのものが絡んでくる。


最初は実際に起きた事件を題にしていたものが、
次第に先行する作品をトレースするように犯罪が起こりだし、
奇妙な一致が捜査陣をさえ混乱させる。

作者の方は言うまでもなし。あまつさえ
『両角』が眼前に姿を見せるに及び、
その恐怖は極みに達する。

共闘する『圭吾』と警察を嘲嗤うかのように
年を跨いで犯行は繰り返されるのだが、
それを解決に向かわせるのは
やはり画と漫画のチカラというのは、
少々のあざとさは感じさせるものの、
良く練られた構成。


犯行動機にも、世情を上手く取り入れ、
レッドヘリング的な要素も手際良くまぶされる。

終盤近くにはあっと思わせる展開も用意し
抑揚の付け方は抜群に巧い。

なによりも、警察が無能に過ぎない設定は上々。
一方で、良識に囚われている捜査のため、
あたら真相に辿り着けないとの流れはやや皮肉めいた造りではあるが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


ただ中盤以降、終幕に向けて張られた伏線そのものが
透けて見えてしまうのが残念なところ。

ラストの盛り上げのシークエンスも同様。


また、『圭吾』の、
それこそキャラクター造形が浅薄で説明不足なのは歯がゆい。

実際は全体の筋に膾炙する重要なプロフィールなのに
生かし切れず説明口調になってしまったことへの恨みはかなりあり。

もっとも脇を含む全ての登場人物に
この不満は当てはまるかも。


ただ、これだけで既にして二時間を超える尺。
多面な要素を加えて盛り込むのは
難しかろうとも思う。

それは企画者である『川村元気』お得意の
メディアミックスの分で対応される予定なのだろうか(笑)。


更に言ってしまえば、両に角があるのは
悪魔の象徴。

それに魅入られ作品化するとの流れは
世界から猫が消えたなら〕と類似の基本プロット。

人間ってなかなか、雄飛したアイディアを紡ぐのは
難しいようで。