RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

アウトポスト@チネチッタ川崎  2021年3月14日(日)

封切り三日目。

席数191の【CINE10】の入りは五割ほど。

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2000年代に入ってからも
アフガニスタン紛争」「イラク戦争」「対ISIL戦争」と
アメリカが関与した戦争は打つ続き、
何れもイスラム圏なのが特徴的。

なのでそれらを題にした小説/ルポルタージュ、更には
原作にした映画も続々と制作される。


しかし大昔の戦争映画とは異なり
一方的にアメリカ軍礼賛で終わらないのは特徴的。

部隊内での連帯や相手勢力への抵抗を描きつつも、
どうしようもない虚無感が残る作品が多く、
本作もその一つに列せられる。


「キーティング前哨基地」はパキスタンアフガニスタンを結ぶ要路に位置し、
一方で周辺住民との融和を図ることも、存在し維持される理由の一つ。

が、地勢的には圧倒的に不利な面が。
三方を険峻な山に囲まれ、攻めるに易く、守るには困難な地形。

「なんでこんな場所に基地を造ったのよ」との不満は
劇中での会話も、
鑑賞者はよりその想いを強く持つ。

軍事化の立てる戦略は、時として
一般人はおろか末端の兵士にも理解不能なケースがあるのは
繰り返し取り上げられて来たところ。

勿論、それが招く惨劇についても。


少数のタリバン兵による襲撃のうちはまだよかった
(それでも死傷者は出ていたのだが)。

が、敵が大挙して押し寄せて来た時に
泥沼の戦いが発生する。


緊張感が打ち続く日々の中でも
兵士たちの会話はユーモアに満ちたもの。

いざの時は一蓮托生であり、そのためには
関係を円滑に持つことの重要さを誰もが弁えている。


小さな波が時としてあり、一方で束の間の平穏もあり、
最後には大波が押し寄せる。

その緩急を付けた描写が巧い。

観客は最後の最後に一山来ることは判っているのだから
それまでにどれだけ気分を高揚させられるか。


リアルな戦闘シーンに付いては当然のこと。

そこで繰り広げられる人間模様も。
勇気を奮い戦友を救いに向かう決死のシーンには
観ていて拳をぎゅっと握りしめてしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


しかし本作での白眉は本編終了後にある、
当事者達のにインタビューした映像が
エンドロール時も併せて流される。

そこで語られる中身のやるせなさと言ったら・・・・。


更なる驚きは、実際に戦場にいた当人が
自身役で出演を果たしていたことで。

その目論見は、〔15時17分、パリ行き〕とは異なり
まるっきりの成功裏に終わっているのだが、
その胸の内に去来する思いはどのようなものであったろうか?