封切り九日目。
席数95の【SCREEN4】の入りは六割ほど。
どうせまた、監督である『
蜷川実花』の透徹した美意識が徹頭徹尾
披瀝されるのだろうそれが好嫌の分かれ目になるだろうとは思っていた。
ところが、やや黒さを帯びた原色や、鮮やかな生花の使用は予想通りも
思いの外気にならず、寧ろ本作に限っては(あ、〔
ヘルタースケルター〕も
悪くはなかったかも)内容に沿った表現になっていたかと。
勿論、想定通りだったのはストーリー面のつまらなさで
ほぼあってないようなもの、オマケに設定上の破綻は相当に見られるし
ドラマ部分の展開も情けなくなるほどつぎはぎだらけの出鱈目さ。
しかしそれを補って余りあるのが
実質的な主役である『オオバカナコ』を演じた『
玉城ティナ』の出来の善さ。
そう本作の実態は、一人の内向きの少女の成長譚、
一見看板に見える『ボンベロ(
藤原竜也)』は
狂言回しにしか過ぎないのだ。
それ以外にも見どころは幾つか。
端役にまで無駄に有名どころを贅沢に揃えた演者陣。
監督の
人間性の一端を示すものか。
また
トリビア的に楽しめるコラージュも多々。
一例としては亡くなった親分である『デルモニコ(
蜷川幸雄)』の肖像を前に
『ボンベロ』がその恩義を語る場面。
これはそのまま『藤原』-『蜷川』の関係性を
自らの口で伝えたもの。
そういった過去を知るほどに、今回のキャスティングには得心が行く。
舞台となるダイナーの壁を飾るのは『
横尾忠則』の作品群。
カギとなる酒のボトルの造形は『
名和晃平』が手掛けるなど
細部にもきめ細やかさが宿っている。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
『
ドヴォルザーク』の〔
交響曲第9番(新世界から)〕と
〔第2楽章(家路)〕も印象的に使われ
本筋とは無関係の個所で色々と楽しめる一本。
監督本人も、敢えてそこを狙っているんじゃ?