封切り二日目。
席数97の【SCREEN1】は四割ほどの入り。
原作となった『沼田真佑』の短編小説は未読。
しかし「芥川賞」受賞だし
wiki先生によると
「高い技巧と洗練された文章とが交差したことにより、
人間の心の内面や現代社会が抱えるテーマを巧みに取り入れた
“純文学の傑作”との呼び声が高くなっている」
とのことなので、相当の出来なのだろう。
どうやら監督の『大友啓史』が目指したのは
それを画面上に忠実に再現する試みだと思われ、
極めて野心的。
成功すれば大いいに賞賛されるべきも
実際にはどうなったか。
医療品を扱う会社に勤務している『今野(綾野剛)』が
子会社への出向で盛岡に赴任する。
馴染みのない土地での暮らし、知己もおらず
孤独をかこつ。
そんな折、同じ事務所に勤める『日浅(松田龍平)』が声を掛けて来る。
『今野』は二重の意味で興味を持ち、程無く二人は親しく交流することになる。
が次第に『日浅』の刹那的な言動が目立つようになり
「3.11」を境にふっつりと消息が途絶える。
行方が気に掛かる『今野』が知人を尋ねて回るうちに
思いもしなかった「裏の顔」が顕になる。
ここで「裏の顔」とされている事柄は大きく分けて三つ。
しかし、うち二つは正直ありがち。
自分も実際に体験しているモノもあるし、人からも聞くハナシでも。
『日浅』が思わせ振りに近しいことを語るシーンはありつつ
それほどのコトの大きさは感じ取れない。
どんな巨悪かとワクワクしたのだが、正直ちょっと肩透かし。
もっとも最後に披瀝される行いは、自分が当事者なら激高するかもだけど。
監督は配役からして相当の腐心をしたことは見て取れる。
直近で似た様な役柄の多い『綾野剛』は性的嗜好も含め表現力は十分。
『松田龍平』も剣呑な雰囲気を見に纏い、怪しげな空気を醸す。
アップの多様で心象を描き出すことにも、共に問題なく応えている。
しかし、社会や人間の暗部に踏み込むまでの表現が出来ているかと言えばそれは別問題。
一人の青年の数年間のクロニクルを平板に追っただけの描写にしか見えず
時に冗長ささえ感じられ、どうにも物語り世界に入っていけない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆。
130分を超える尺はメリハリが無く、似たシーンの繰り返しは
眠気と共に、作品自体への猜疑心も芽生えさす。
最後のシークエンスで盛り上がりはするものの
全体としての流れは終始良くない。
地方発の作品にありがちな、
製作者サイドの極めて自己満足的な仕上がりの一本。