封切り二日目。
席数257の【SCREEN9】の入りは九割ほど。
さすが、「本年度アカデミー賞最多ノミネート」との惹句は
集客への寄与度は絶大だなと思う。
これはシンクロニシティとでも言えば良いのか。
直近公開された数作で、個人の映画体験を紐解いた作品のなんと多いこと。
『スピルバーグ』の〔フェイブルマンズ〕は、
自身が映画製作にのめり込むことになった経緯そのものだし、
『デイミアン・チャゼル』の〔バビロン〕も「古きハリウッド」へのオマージュが溢れ、
最後には自分が影響を受けた作品がばらばらばらとマシンガンの様に速射される。
その傾向は本作とて例外ではなく、
〔スター・ウォーズ〕〔インディ・ジョーンズ」〕の各シリーズや
〔2001年宇宙の旅〕等の{SF}{冒険活劇}モノは勿論のこと、
はては〔モンティ・パイソン〕のシリーズまでが引用。
まぁ大元には、『ジャッキー・チェン』の{カンフー}モノ、
とりわけ日用雑器を技斗に取り込んだそれがあるのは論を待たず。
ストーリー自体は極々シンプル。
「マルチバース」の他のバースで脅威となる自身の娘を止めるため
母親が奮闘するとの物語り。
最後は家族愛を歌い上げるものの、
2020年に話題となった〔ミナリ〕と相当に近似の印象を受ける。
先の作品は、移民の韓国人家族が開拓民宜しく奮闘。
中途夫婦仲が険悪となったり、祖母の存在が大きく影響したり。
ちなみに本作同様、「A24」の配給だったわけだが。
「マルチバース」等の、最新の言い回しは仕掛けにしか過ぎず、
あくまでも自分(達)が影響を受けた映画を画面上に表現するための方便、
本当にやりたかったのは家族愛を描くとこではなく、
そちらじゃないの?との疑念は
観終わって益々強固に。
ため、語り口は相当に冗長。
披瀝したいマスターピースはたっぷり有る様で
二時間半に近い尺は、中途でぽつぽつと睡魔に襲われてしまう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
監督・脚本の『ダニエルズ』は
2016年に〔スイス・アーミー・マン〕を撮っているが、
肢体の扱いはぞんざい、ブラックで且つ内容も不条理なため賛否両論。
『シャイナート』の方は単独で
〔ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年)〕を
『ディック・ロング』役としても出演し撮っている。
後者の方は、タイトルが事件が起きた理由そのものへのヒントになっており、
また今回の作品に通じる、かなりお下品な内容となっている。
最新作は、先行二作のトーンを相当に引き継いでおり、
何故にここまで広範に受け入れられるのかはさっぱり理解不能。
「A24」最大のヒットということだし。
米国はそこまで家族愛を渇望しているのか。