RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書@TOHOシネマズ新宿 2018年4月1日(日)

封切り三日目。

席数184の【SCREEN5】は満員の盛況。

こんな地味な社会派ドラマが満席になるだなんて
アカデミー賞」の威力を改めて思い知らされる。


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その後の「ウォーターゲート事件」への思いがあるのかもしれないが
本作で『スピルバーグ』が描く『ニクソン』大統領は
偏狭でちっぽけな、随分と嫌味な男。

尤も、彼は後ろ姿や声が出るだけで
正面からその身を現すでなく
陰から操るうさん臭さを更に存分に体現しているわけだ。


1971年に「ニューヨーク・タイムズ」が先行した
(進行中の)ベトナム戦争を分析した国防総省の機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の暴露記事に、
別のソースから同内容を入手した「ワシントン・ポスト」も半歩遅れで参戦する。

しかし国からは、記事の差し止めを陰に陽に要請され、
その争いは司法の場にまで持ち込まれる。


報道の自由が民主主義の健全さには必要とのメディアの側の立場と、
機密情報の漏洩は国家の安全保障の根幹にかかわるとの国の主張は
最後まで平行線を辿る。

もっとも、「ベトナム戦争」での失敗を覆い隠し
敗北の責任を取りたくないために、だらだらと戦争を継続
多くの死者を出し、膨大な戦費を垂れ流していた失政は
本件が無ければ果たして1975年で終わったものかと
その点では怪しい限り。


本作ではそういった自由性の大切さを高らかに歌い上げるのに加え、
別のもう一つのテーマがある。

それは「ワシントン・ポスト」の社主である
『キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)』の発行人としての、また
人間としての成長。


とは言って、当時彼女は五十代も半ば。
さすがに 成長 は言い過ぎかも。

しかし、社主の娘に生まれたしたものの、彼女には
後を継ぐ意思は毛頭なく、辣腕の編集者かつ経営者である夫に
全てを頼り切っていたにも関わらず、彼の自殺によりその思いは断ち切られる。

望まずに巡って来た立場に困惑し自信すら失いつつあるところに
社運を左右するこの事態に大英断を下す。

その時から態度は見る間に変容し、威儀すら漂う如く見えるのは
さすが『メリル・ストリープ』の名演。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


官憲の腐敗の規模も凄まじい一方で、
それに相対するメディアの側の思いも激しい彼の国のダイナミズムを
改めて思い知らされるとともに
翻って本邦ではどうだろうと改めて考えて見る。

三権の分立さえ怪しいことを勘案すれば
もはや嘆息しか出ないわけだが。