RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

手紙は憶えている@TOHOシネマズシャンテ 2016年11月14日(月)

封切り三週目。

席数224の【CHANTER-1】の入りは九割ほどと盛況。


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正直、なんでこんな作品を作ったかなぁ、と
毒づきながら観に行った。

何故って、予告編でも、いや
チラシを見てさえ仕掛けはミエミエだし。

オマケに記憶を失くしてしまうと言う
手垢の付いた設定。

それでも、と思ったのは
なんとなく心の隅に引っ掛かるモノがあったから。


結果としてはかなりの正解。

いや、確信的な予想は裏切られることは無かったけど
其処に到る経緯のエピソードが上手くできている。


主人公の『ゼブ・グットマン(クリストファー・プラマー)』は
アウシュビッツ」の生き残り。
たまたま老人ホームで同居する
同じ境遇の『マックス』と示しわせ、
自分達の家族を亡き者にしたナチSSのブロック長『ルディ・コランダー』を探す旅に出る。

『マックス』が同道できないのは、それなりに理由があり、
『ゼブ』自身も大きな瑕疵を抱えている。


それは一度睡眠を摂ると直近の記憶が消えてしまうと言うもの。
博士の愛した数式〕でも〔メメント〕でも用いられた手法だが
今回は更に手が込んでいる。

何せ、ちょっとうたた寝をしただけでも記憶が消えちゃうんだから。

数年前から認知症を患い、過去の記憶についてさえおぼろげ。
加えて、一週間前に妻を亡くしたことで
更に症状が悪化している状態。


それを救ってくれるのが
邦題にもある『マックス』が書いてくれた「手紙」。

目を覚ます度に、メガネを探す『横山やすし』状態になるわけだが、
必ずしも常に手紙が身近に在るわけではなく、これがサスペンスの薬味の一つ。


そしてもう一つは、追う側が(勿論、追われる側も)著しく高齢と言うコト。

常であればマッチョなお兄ちゃんがアクションするのに
『ゼブ』は拳銃を持つ手さえ覚束ない。

あまりの頼りなさに却ってハラハラドキドキしてしまう
素晴しい計算づく。


そして「アウシュビッツ」での記憶を呼び覚ますシーンが
そこそこに挿し込まれる。

それは例えばシャワーヘッドの大写しであったり、
貨物列車の貨車であったり。

所謂、レッドヘリングとしての機能も持つが
それはまた後のハナシ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


往時の関係者も齢九十を迎え
放って置いても、老いさらばえ、亡くなってしまうだろうに、と
当事者でない者は考える。けど、
どうやらそんな単純なものではなく
三つ子の魂のように
迫害された側の記憶は永遠で、
それが原題の指し示すところなのだろう。