RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

orange オレンジ@チネチッタ川崎 2015年12月23日(水)

封切り二週目に突入。

席数154の【CINE 9】の入りは五割ほど。

客層は事前予想通り
主演男優目当てと思われる若い女子の二人連れが多し。


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高校二年の新学期の初日、
十年後の自分からの手紙が突然届く。

最初は薄気味悪さを感じていたのが、
書かれていることが次々と現実になるに連れ、
信じざるを得なくなる。

しかし一方で、あれをするなとか
これをしろとか、微細な指示は不可解であるし、
果ては、転校生の『成瀬翔(山崎賢人)』が
自分達の前から消えてしまうとの一文を見るにおよび、
『高宮菜穂(土屋太鳳)』はある決意をする。


最初は良くある、過去を変えようとする試みが
ハナシの主軸にあるのだろう思った。
ムカシから多く使われている、やや手垢の付いた設定。

しかし、物語が進むうちに、どうやら
そうではないコトが判って来る。

ましてや、劇中に「タイムパラドクス」の説明まで出て来るのだから
余計にそうである。


我々の日々の暮しは、後から思い返せば、
あの時こうしておけば良かった、とか
ああしていれば、今頃どうなっていたんだろうとの
後悔の積み重ね。

しかし、そう言った、小さな後悔が
ドミノの様に連鎖し、果ては大きな後悔へと繋がってしまう。
そして、その喪失感は、二度と取り戻せないほど過大。

今の自分が変ることはけしてないけれど、
過去の自分が悔やむことなく生きるコトで
より良い方向に変って行って欲しいと言う
精一杯のエール。


それに気づいた時に、観客は今までの自身にも向き合うし
劇中の登場人物達の未来が、より良い方向に変って行って欲しいと
切に願う。

果たして、未来は(いや、実際には過去か)
変えることができるのだろうか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


唯一の失敗点を挙げると、
『土屋太鳳』演じる主人公『高宮菜穂』の造形。

なんとなれば本作も、
コミックの世界観を忠実に映像化した一本。

そのため、漫画の中では「吹き出し」として扱われる科白が
本作では『菜穂』のモノローグで表現され、
二時間半の長尺の半分近くを占めている印象。

で、この発声が妙に甲高く、舌っ足らずで、独特の口調。
勢い、興を削いでしまっている。

勿論、監督の演出だろうけど、
何とかならなかったものか?