RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

怪物@チネチッタ川崎 2023年6月3日(土)

封切り二日目。

席数284の【CINE5】の入りは七割ほど。

 

 

黒澤明』の〔羅生門(1950年)〕でお馴染み、
主要な三者の視点で一つの出来事を描く。

小学生の息子を持つ
シングルマザーの『麦野早織(安藤サクラ)』。

担任教師の『保利(永山瑛太)』。

そして『早織』の息子の『湊(黒川想矢)』。

夫々の順に語られ、同じ事象であるハズなのに、
度毎に異なる側面を見せ出すのはお約束の流れ。


『早織』にしてみれば息子は被害者で
『保利』は「モンスターティーチャー」。

『保利』にとって『麦野』親子は「モンスターペアレント」と「モンスターチルドレン」。

が、不思議なことに『湊』にとっては
必ずしも『保利』は忌避する存在ではない。
母親との関係も、思春期にありがちな断絶も見られない。


とは言え、母親からすれば、息子の些細な変化にも過敏に思いを巡らす。

傍から見れば、『早織』が贔屓の引き倒しで
不確かな噂や外見に過剰に反応した結果とも見える。


そしてまた、子供は嘘をつく。周囲に流されやすい特性もあり。

勿論、大人もそれは同様。
とりわけ学校を守ろうとする校長の『伏見(田中裕子)』の存在も事態を混乱に導く。


こうした物語りでは、最後は三者三様の混沌になるケースが多いのだが、
本作ではそれを善しとしない。

起承転結の輪郭が次第に明確になり、
最後に鑑賞者は理解し安堵を得る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


久々にぐいぐいと引き込まれるような語り口に
固唾を飲んで観入ってしまった。
カンヌ国際映画祭 脚本賞」は
伊達ではないとの納得感。

そして邦画には珍しく、子役の男児が二人とも演技が巧い。
『湊』の友達の『依里(柊木陽太)』も含めてのことだが
これは極めて珍しいこと。