封切り二日目。
席数284の【CINE5】の入りは七割ほど。
『黒澤明』の〔羅生門(1950年)〕でお馴染み、
主要な三者の視点で一つの出来事を描く。
小学生の息子を持つ
シングルマザーの『麦野早織(安藤サクラ)』。
担任教師の『保利(永山瑛太)』。
そして『早織』の息子の『湊(黒川想矢)』。
夫々の順に語られ、同じ事象であるハズなのに、
度毎に異なる側面を見せ出すのはお約束の流れ。
『早織』にしてみれば息子は被害者で
『保利』は「モンスターティーチャー」。
『保利』にとって『麦野』親子は「モンスターペアレント」と「モンスターチルドレン」。
が、不思議なことに『湊』にとっては
必ずしも『保利』は忌避する存在ではない。
母親との関係も、思春期にありがちな断絶も見られない。
とは言え、母親からすれば、息子の些細な変化にも過敏に思いを巡らす。
傍から見れば、『早織』が贔屓の引き倒しで
不確かな噂や外見に過剰に反応した結果とも見える。
そしてまた、子供は嘘をつく。周囲に流されやすい特性もあり。
勿論、大人もそれは同様。
とりわけ学校を守ろうとする校長の『伏見(田中裕子)』の存在も事態を混乱に導く。
こうした物語りでは、最後は三者三様の混沌になるケースが多いのだが、
本作ではそれを善しとしない。
起承転結の輪郭が次第に明確になり、
最後に鑑賞者は理解し安堵を得る。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
久々にぐいぐいと引き込まれるような語り口に
固唾を飲んで観入ってしまった。
「カンヌ国際映画祭 脚本賞」は
伊達ではないとの納得感。
そして邦画には珍しく、子役の男児が二人とも演技が巧い。
『湊』の友達の『依里(柊木陽太)』も含めてのことだが
これは極めて珍しいこと。