封切り二日目。
席数244の【CINE7】の入りは四割ほど。
「イイネ」をより多く獲得するため、
自身の生活を公にさらけ出す人が引きも切らない。
勿論、収入目当ての側面もあろうが、
本作の主人公の母親の場合は
自己顕示欲の一点。
大怪我の為にフィギュアスケーターになる夢が挫折し
今ではそれを体操に打ち込む娘に託す。
もっとも、その娘『ティンヤ』にしても、
自身がやりたくて競技に向き合っているのかは甚だ疑問。
満たされない思いを、幸せな家族を演じることで糊塗し、
外に向け発信を続ける母に逆らえないでいるだけの様にも見え。
実のところ母親は、夫にも、息子にもさして興味を示さず、
常に自身のエゴが優先され、あまつさえ
あっさりと外に居場所を見つける始末。
娘にも自分の果たせなかった可能性を実現してくれる期待を見ているだけで、
真性の愛情があるのかどうかすら怪しい。
そのことを窺わせるエピソードも、
幾つかは盛り込まれてもおり。
主人公が卵を拾い、それを育てるとのプロットの造りが
先ずは優れている。
「托卵」「刷り込み」「素嚢乳」等、
鳥に特徴的な子育てが巧くストーリー取り込まれ、
産み出された異形の者と『ティンヤ』との関係性に絡む。
両者の立ち位置は、まるっきりの白と黒。
良い子を演じる為に抑圧して来た思いが、
全て吐き出された造形。
しかし本当のモンスターは
眉目秀麗な母親であり
その恐ろしさをホラー仕立てにして
観客に提示しているわけなのだが。
そのために、過去作の印象的なシーンを
幾つかコラージュ、
〔サイコ(1960年)〕や〔キャリー(1976)〕からの引用が
かなり効果的に機能。
怖気をふるいつつ観終わり、はて?
ホントに怖いのは誰だったろうと
改めて腕組みをしてしまう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
フィンランド発、「サンダンス映画祭」プレミア上映、
「ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭」グランプリが惹句として付けられているが、
アメリカであれば「A24」が好みそうな中身ではある。