RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

渇水@TOHOシネマズ日比谷 2023年6月4日(日)

封切り三日目。

席数98の【SCREEN2】の入りは七割ほど。

 

 

その年の関東地方はまさに異常気象。
降雨の無い日が延々と続くことによる水不足で
給水制限が発令される自治体が続出。

なかでも群馬県前橋市
ただでさえ最高気温が高い地域。
市営プールは閉鎖となり
公園の噴水も止められ、
市民の不満はいやがおうでも高まるばかりで、
その憤懣は至る所に波及する。


市の水道局に務める『岩切(生田斗真)』は
『木田(磯村勇斗)』とペアを組み
水道料金の未納世帯を訪れ督促をするのが業務。

四ヶ月の滞納で「停水執行」となり、
水道を止めなくてはいけない。

はなから払う気のない
鼻もちならい住人も居る一方で
困窮家庭では他の公共料金も払えぬケースもアリで
その行く先々では様々な葛藤が生まれる。

しかし、そうした相手にも丁寧に応対し頭を下げる業務に、
心身をすり減らす職員も出て来るのが実態。


そんなおり、二人は育児放棄を受けている幼い姉妹に出会い、
業務の範囲を超えた救いの手を差し伸べる。

『岩切』自身も妻子とは別居状態になっており
表向きの態度とは異なり、心の中はささくれ立っていたのかもしれない。

そうした乾いた胸の中にぽつんと落ちた水滴のように
主人公の内面に次第に変化が訪れる。


からからに乾燥した空気と
『岩切』の満たされない心の内を「渇き」と表現。

彼自身も、親からはあまり良くない扱いを受けた幼少期の体験があり、
自分の子供にどう向き合って良いのかの戸惑いが。

姉妹の存在は、そうした思いを変える潤いとなりはするのだが・・・・。


最後はある種の大団円へと繋がるものの、
その過程で主人公が取った行動は唐突に過ぎ納得感は皆無。

加えてそれへの褒美のようにもたらされる結果にも
前触れも連続性もなく、結末を急ぐための流れのようで釈然としない。

もうちょっと上手い落としどころを見せてくれないと、
人間ドラマとしてのカタルシスは得難いのではないか。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


幼い姉妹を演じた『山﨑七海』と『柚穂』が
出来過ぎなほどの演技。

なまじ周囲の大人が芸達者で固められているだけに、
第二の主人公とでも言うべき二人の成否の作品への影響は大。

これを引き出した監督の『髙橋正弥』は
多くの作品で助監督を務めており
その成果が花開いたとの感想。