封切り七日目。
席数349の【シアター6】の入りは七割ほど。
悪が蔓延る街「ゴッサム・シテイ」で
孤独をかこつ『アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)』が
いかにして悪の象徴『ジョーカー』になったか。
それにしてもなんて悲しいストーリーだろう。
認知症の母親の面倒を見ながらも
他人を喜ばせる道化を演じ日々の糊口を凌ぐ『アーサー』。
スタンダップコメディアンを目指すも発作的に起こる笑いの為思うに任せず
識字の面でも問題があるよう。
でも心根の優しい、実は好漢なのだ。
そんな彼を次々と不幸が襲う。
徒に暴力をふるわれたり、為政の皺寄せであったり、知人から罪を押し付けられたり。
加えて母親との関係の真実を知り、ついには狂気に落ちる。
オハナシの上とは判っており、池に落ちた犬はたたけ
とは言うけれど、そこまでいたぶる作りにするかなぁ、と
義憤さえ感じてしまう。
しかし本人にとっては全てがリアル。
やがて怒りが爆発し、連鎖するように
街は暴動の炎に包まれ、『ジョーカー』が誕生する。
その時の彼のピエロの化粧はぞっとするほど禍々しい、
冒頭の隈取りはあれほど愛嬌に満ちていたのに。
生き物じみた街そのものが
意志を持ったように一人の男を苛んだ結果、
大きな悪を生み出してしまう。
しかしこれは果たしてフィクションだろうか。
実は世界の至る処で、小さな『ジョーカー』が日々生み出されているのではないか。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。
『ホアキン・フェニックス』渾身の演技が素晴らしいの一言に尽きる。
今年の「アカデミー主演男優賞」は最早、彼に決まりだろう。