RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

天間荘の三姉妹@109シネマズ川崎 2022年10月29日(土)

封切り二日目。

席数118の【シアター3】の入りは三割ほど。

 

 

「天間荘」は天上と地上の狭間に在る
古風な宿屋。

そこは臨死状態にある人の魂が辿り着き、
疲れを癒しながら、天上に旅立ち死を迎えるのか、
それとも地上に舞い戻り再び生きる決意をするのかを決める一時投宿の場所。

しかし、滞在期限は決められておらず、
随分と長い間逗留する人も居る様子。


そんな場所にある日
『小川たまえ(のん)』がやって来る。

彼女が何故臨死になったかは触れられぬが、
既に「天間荘」で働いている二人の姉妹の
腹違いの妹であることが冒頭に示される。


ここで我々の世代は、最早ニヤリとしてしまう。

彼女等の名前って
〔欽ちゃんのどこまでやるの!〕の三つ子の設定だよね?

原作者の『髙橋ツトム』も同年代でしょ(笑)。


さはさておき、
では宿屋の人々、或いは「天間荘」が在る町「三ツ瀬」の住人は
一体どのような境遇なのとの疑問は当然の如く湧き上がる。

これにも幾つかのヒントはあり、
中途で「ははん」と思い当たるのだが、
やはりその設定は相当に切ない。


物語は、「天間荘」で働くことになった『たまえ』が
自身と同じ境遇の人達と触れ合う中で、
生きることの意味と価値を見い出して行く。

積み重ねられる幾つかのエピソードは、
一見して不幸な境遇に置かれている当人はそう感じていなくても、
実は周囲には自分のことを慮ってくれる人が多く居ることを
改めて提示する。

かなりの長尺のこともあり、
それに纏わるお話は十分に過ぎるほど語られるわけだ。


世に「天寿を全うする」との言葉がある。

「長生きをする」とか「病気や事故でなく自然死する」の意との認識も、
長命でなくとも、また突然断ち切られた命であっても、
それまでの時間をどう濃密に生きたのかが
その人が存在した証になるし印象付けるとの想いを改めて強く持つ。

生きている人に記憶されている限り、
亡くなった人間の二度目の死は有り得ないのだから。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


最近駄目な中年が板に付いて来た『永瀬正敏』を除けば
本作はほぼほぼ女優さん達を愛でるための一本。

老いも若きもバシバシと演技に火花を散らし
鑑賞する側はなかなかの眼福の二時間半。