RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

BLUE/ブルー@109シネマズ川崎  2021年4月11日(日)

封切り三日目。

席数89の【シアター9】の入りは三割ほど。

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ボクシングの魔性に魅入られてしまった漢達の群像劇。

一つプロボクサーや練習生にとどまらず、
ジムの経営者やトレーナー等を含めてのこと。

それが持つ蠱惑さは、ラストシーンに如実に現れる。


題名の「ブルー」は「青コーナー」の意で
タイトル戦であれば挑戦者が、それ以外であれば格下の選手が
何れも入場するコーナー。

一度プロとなったからには、皆が皆、
赤コーナーに座ることを目指すし、
何時かは我がジムからチャンピオンをと、
スタッフ達も夢を抱き、日々の活動に邁進する。


負けが続き一度は引退をしたものの、
数少ない勝利の味が忘れられず舞い戻ってきた『瓜田(松山ケンイチ)』は、
それでも勝ち星を上げることができず、逆に
対戦相手の分析やトレーナーとしての才能を発揮する。

それでも彼は選手としての自分にこだわり続ける。


『瓜田』の後輩である『小川(東出昌大)』は
日本チャンピオンへの挑戦を目前に、
パンチドランカーの症状に苦しめられる。

これ以上続ければ重篤な疾患につながる可能性もあるのに
上を目指す闘争心は消えることがない。

体を壊すことすら代償にする強い意志とあくなき渇望。


「大牧ジム」の新人である『楢崎(柄本時生)』の
入所動機は職場の同僚にモテたいとの不純なもの。

しかし『瓜田』に教わるにつれ、ボクシングの面白さに目覚め
次第に上を目指して行く。


三様の戦う背景と、リング上での闘いが丁寧に描かれる。

実在のプロボクサーも起用しての拳闘シーンは、
なので迫力の面でも十分。

先の三人も縦横に動き回り、興が削がれる隙も無い。


その間に、『小川』と付き合っている『千佳(木村文乃)』を媒介に
『瓜田』との三者の関係性が差し込まれる。

互いの仄かな思いが交錯し、
殺伐とした闘技の中に、心がほっと和らぐような優しいシーンが
見事な緩急を生む。

が、底辺を流れるのは才能を持つ者への嫉妬、
勝てないことへの焦燥と勝者への怨嗟。

それらが嫌味にならない形で描写される。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


ボクシングを扱った映画で、駄作は無しと断じてしまう。

洋画であれば〔ロッキー(1976年)〕をはじめとし
レイジングブル(1980年)〕〔ミリオンダラーベイビー(2004年)〕を、
邦画であれば〔ああ荒野(2017年)〕〔百円の恋(2014年)〕をと、
たちどころにほいほい挙げることが可能。

裸の体と特殊な体技を晒すわけだから
肉体改造やトレーニングの数々も必須で、
役者としての矜持も求められる。

もっとも『デ・ニーロ』は違う改造もしちゃったわけだけど(笑)。