封切り三週目に突入。
席数107の【CINE1】の入りは二割ほど。
エンドロールで両親への献辞がクレジットされる。
其処からも判る、本作は、監督自身や周囲の体験の映画化。
1980年代後半の『ゴルバチョフ』による「ペレストロイカ」以降、
ソ連からイスラエルへ移民するユダヤ人が急増する。
彼らはそれなりに知的でステイタスもある人々。
ソ連ではそこそこ裕福な暮らしであったはずなのに、
それを捨てても約束の土地を目指す。
もっともその先でも、同じか、いやそれ以上の生活が保てるとの目算も
あったのだろう。
しかし実際に来てみれば、言葉は通じず、
頼りにしていた職歴には全くニーズが無く、生計を立てるにも困惑する有様。
コミュニティでの関係性もあてにはならず
中には法律すれすれ、いや非合法な生業に手を染めるケースもあっただろう。
本編ではその次第を、一組の声優夫婦に仮託し描き出す。
母国ではそれなりに人気を博したのに、
当地ではさっぱり。要望すらなく。
子供もおらず、既に初老。
長年続けて来た技能以外はとんと役には立たない。
鑑賞者の側からすれば、ほろ苦い笑いと
そこはかとないペーソスを感じるのだが
当の本人であれば、そんな悠長なことは言っておられまい。
それを契機に長年内に秘めていたパートナーへの不満がじわじわと滲み出し、
互いの関係に波風が立つ。
それはどの夫婦にも、何かをきっかけに起こる可能性があるもの。
とりわけ本作の場合は、お金の問題が根幹にあるので、コトの解決は容易くはない。
二人の関係は修復し、新たな土地で生きて行けるのか、それとも・・・・。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
事前に知識は得ていたとしても、見知らぬ土地に馴染むのは大層なこと。
其処から派生する仲違いを解消する手段は何処にあるのか。
ここではそれを家族の絆に求めるのだが、
実際にはそこまで簡単ではあるまいとも思う。