封切り三日目。
席数244の【CINE6】の入りは三割ほど。
バス用品の売り子が、何の縁か
大企業の御曹司と結婚。
俗に言う玉の輿で、以降の生活の安寧は担保されたようなもの。
しかし本作の主人公『ハンター(ヘイリー・ベネット)』は
憬れのハイソな暮らしに馴染めず、
次第に疎外感や窮屈さを感じるように。
そんな折、彼女の妊娠が判明。
跡取りが出来たと、夫を始めその家族の喜びは一様ではない一方、
マタニティブルーとでもいおうか
『ハンター』の神経は不安定に。
ところがふと目に着いた異物を口に入れた途端、
心が安らぎ、あまつさえ感じる高揚感。
彼女はその行為を止められなくなってしまう。
原題の「swallow」には「飲み込む」の意の他に
「耐える」「無条件で受け入れる」等の意味もあるらしい。
まさに主人公の境遇を言い得て妙。
周囲の人々は須らく夫の家族の息が掛かっており、
生活は優雅に見えても、実は閉塞感に満ちている。
また単純に、「燕」の意と取っても良いかもしれない。
所謂「籠の鳥」状態を現す表現として。
中途流れるBGMの歌詞にも「鳥」に纏わる表現は現れる。
そして「燕」の喉は赤かったよねぇ、と
思いだす。
愛情に満ち溢れ、常に自身の味方であると信じていた夫も
必ずしもそうではないことを知るに及び
彼女はある決断をする。
それは一つの自立の方向性の打ち出し。
中途語られる主人公の過去の境遇全てへの
アンチテーゼでもある。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
異物を嚥下し、それを回収する行為の繰り返しを見ながら、
時として金属やガラス、プラスチック以外、
消化できてしまうものも飲み込んでいる場面があることに気付く。
それは何を意味するのか。
そして彼女にとっての一番の異物は、
実はお腹の中に居る血の通った子供ではないかと
物語りの早いうちから多くの人は気づくのだろう。