封切り二日目。
席数197の【SCREEN1】の入りは五割ほど。
子供に親は選べないし、ましてや
親の職業は尚更。
貴賤はないハズなのに
幼い頃は「ラブホの娘」とからかわれ、
長じてからは好きでもないのに手伝いに駆り出される。
しかし、主人公が育ったのはその家業のお陰だし、
美大への進学を目指せたのも同様。
両親がその事業を始めたのも
それなりの理由があってのこと。
娘にとっては一種、揺りかごの様な場所であったことに
何時気づくのか、または終いまで気づかぬのかかが一つのテーマ。
釧路湿原の真ん前に建つ「ホテルローヤル」は
客室数は十と小体な造り。
休憩3,800円、宿泊5,000円と価格設定もリーズナブル。
地元密着型のラブホで地域の人にもそれなりに愛されている。
元々は経営者夫婦と二人の従業員で始めたものの、
今では夫の方は商売に身が入らず。
妻は孤軍奮闘な毎日。
しかし所詮は男と女の愛欲が渦巻く場所、
一歩中に入ればそこは異世界。
そんなこんなで起きる幾つかの事件。
夫婦間の諍いであったり、従業員の身に降りかかる問題であったり、
利用客の家族関係であったり。
カメラはほぼほぼホテル内から出ることはなく、
それを傍目からとらえ切る。
所謂{グランドホテル}ものの典型例、
但しラブホだけど(笑)。
狂言廻しは娘の『雅代(波瑠)』も
本来の主人公はホテルそのもの。
そこに集まる人々の品性が
さらけ出される場として。
幾つかの山場は用意され、
それに翻弄される『雅代』は
ただただ流されてその場に居るだけ、
主体を持たぬ付属物のような存在。
非常時にもおろおろとするばかりで、
生来の期の弱さが露呈する。
しかしあることを契機に
彼女は決断をするのだが
その時になって初めて気づくのだ、
あれほど嫌っていたラブホが
実は自身に取ってのよすがの場であったことを。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
エンドロールで流れる『柴田まゆみ』による〔白いページの中に〕は
同時代の曲。
往時はかなりのお気に入りで、ヘビロテで聞いていた記憶。
今回改めて耳にすれば、その歌詞が本編の内容とあまりにもピタリ。
制作者サイドはよく掘り起こしてきたものだと、そのセンスに拍手。