RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

水曜日が消えた@TOHOシネマズ川崎  2020年6月21日(日)

封切り三日目。

席数542の【SCREEN5】は、半分でも271人の収容数。
その七割ほどは埋まっている感覚で、
来場者は女性比率が高く、中には母娘で観に来ているケースも。

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今では「解離性同一性障害」と呼称するらしい。

昔は「多重人格」と表現していたとの記憶も、
日本で多くの人が知る契機になったのは
ダニエル・キイス』の〔24人のビリー・ミリガン(1992)〕からかと。

同作者の、フィクションでは〔五番目のサリー(1980)〕、
ノンフィクションでは〔クローディアの告白(1986)〕〔ビリー・ミリガンと23の棺(1994)〕を、
遡っては『フローラ・リータ・シュライバー』による〔失われた私(1978)〕と読み継ぎ、
一時期は自分のかなりの興味の対象であったことを思い出す。


本作の主人公は曜日毎に異なる人格が現れるとのなかなかに面白い設定。

日をまたぐことで違う自分が表に出て、
夫々『月曜日』『火曜日』・・・・と言い慣わしているのだがおそらく
契機となった事故が起きたのが小学生の頃であることから
時間割に即した人格がその時に創られてしまったのではと誰何。

音楽の才能がある者、美術の才能がある者、園芸が好きな者、釣りが好きな者、と
幾つかは学科が反映されているよう。


そんな中、狂言廻しとして登場する『火曜日(中村倫也)』は最も平凡。

性格も大人しくヒトも良いので、
他の曜日の人格達に、家中の片づけを始め
ある意味、便利に使われている。

彼等は一種の連絡ノートを作ることで連携を取り
それなりに上手くやって来ていたのだが、
ある日、どうしたことか『水曜日』が消えてしまう。


普通の人なら365日ある一年も、
ある曜日に取って見ればたったの52日。

連続して迎える朝に、最初は不審を覚えつつ
次第に気分の高揚を隠すことのできない『火曜日』、
何故なら決まって定休に当たる場所へも
行くことが叶うというもの。


ましてや、
人格の減少は「統合」への第一歩かもしれず、
最終的には自分一人だけになる可能性も。

しかし『火曜日』は主治医への報告や
親しい女友達『一ノ瀬(石橋菜津美)』への相談を躊躇い
やがて異変が起きる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


ノートにより、細い紐帯は取れていたものの、
各曜日には彼等なりの生活があったことを改めて思い知る『火曜日』。

一つカラダに同衾しながらもコミュニケーションや他人格への関心は
思いの外薄かったことにも気づく。


「統合」により、他の六つの人格が消えてしまうのは
本当にベストの選択なのか。

周囲の理解が得られ、本人の精神的混乱が無く、
更にQOLが維持できる調和が保たれれば、
それは治療が成功した一つの状態と言えるのかもしれない。