封切り二日目。
席数172の【シアター4】は例によって一席おきの案内なので
現時点では82席。
でも実際の入りは二十人といったところ。
原題は〔Le jeune Ahmed〕、「若輩者アーメド」とでも訳すのだろうか。
普段ならあまり褒めることはない、逆に腐すことが多い配給サイドが付ける邦題も
今回に限ってはなかなかのセンスと誉めそやす。
何故ならラストシーンで、その意味するところが
じわりと心に染みて来るのだから。
ベルギーに住む少年『アーメド』が過激なイスラム原理主義に感化され、
恩ある女性教師の殺害を目論むようになる。
ここに欧州で頻発する銃乱射や自爆テロの萌芽を見るのだが、
主人公の動機の背景がなんとも稚拙で全く共感不能。
曰く、成人の男性は女性と握手してはいけない
何故ならコーランが禁じているから。
それを強要する教師は悪であり、粛清されねばならない。
コロナ禍の昨今なら濃厚接触の可否は百歩譲るも、
西洋的な習慣ではごく当然の儀礼、ましてや
13歳は大人か?との思いも当然のように湧いて出る。
その思想を彼に吹き込む導師が、またどうにもうさん臭い。
自分は後ろに回り、無垢な若者を洗脳、
たきつけて誤った行為に誘導する。
確固たる信念の無い、うわべだけの人物にしか見えず、
何故簡単に信じてしまうかと、疑念はいや増すばかり。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
件の女性教師、少年の母親、矯正プログラムで出会う農場の少女と、
幾人もの女性が救いの手を主人公に差し伸べるが、彼は何れもはねのける。
それには教義とは別の側面がある様に思えてならない。
思春期に特有の潔癖さや思い込んだら一途の直情性、加えて
文化が異なる場所での生き辛さも背景には在るよう。
上手く折り合いを付けて暮らす器用さが
『アーメド』には欠けているのかもしれない。