RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

プロミシング・ヤング・ウーマン@TOHOシネマズ川崎 2021年7月17日(土)

封切り二日目。

席数147の【SCREEN2】の入りは五割ほど。

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そのタイトルにある通り
カサンドラキャリー・マリガン)』は将来を嘱望された女性だった。

医療系の大学に入り、その手技も頭脳も
並みいる男子学生達を圧倒していた。

なのに今は、街場のコーヒーショップで
やる気もなさそうに店員の仕事をこなす毎日。

店の主任の『ゲイル』とは上手くやっているものの、
齢三十にして恋人もおらず、ましてや親しい同性の友人も。


そんな彼女だが、夜な夜なバーに繰り出しては泥酔したふりをして、
目ざとい男にわざとお持ち帰りをさせ、
すんでのところで素面の正体を見せ
男を怖気させることを繰り返す。

手帳に記した名前や人数も、もう幾つを数えるか。

しかし一歩間違えば危険と隣合わせのそんな所業を
カサンドラ』は何故に重ねるのか。

そこには、
大学を中退することになったある事件が背景にあり、
彼女は今でもそのトラウマを抱えているのだが。


もっとも男の側からすれば
主人公の行いはもう恐怖でしかなく、
自分はそんな経験はないけれど、
実際に直面すれば、それはもうほぼほぼホラー。

身の毛もよだつ事態に違いなく、
彼女が変容するシーンでは
おどろおどろしいBGMも流され
当事者は肌に粟を生じるわけだが、
鑑賞者の側からすれば本来は爆笑の場面なのだろう、
特に女性からすれば快哉を叫ぶような。


一貫して描かれるのは、
男女間の差別や社会規範についての異議申し立て。

同じ行為をしても、
男性であれば、若気の至りと済まされるのに、
女性なばかりに
ふしだらとか、身持ちが悪いと断罪されてしまう。

或いは、男性なら、将来があるのだから、と
軽く済まされ、女性は不本意にもその代価を払わされてしまう。

彼女らにも、輝かしい未来が約束されていたことについては
同様のハズなのに。

当事者や身内であれば、我が事として理不尽さに異を唱えるも、
世間や権威は、そういったことにまるっきり無頓着であることに対する
プロテストとしての『カサンドラ』の所業の数々。

ある種〔水戸黄門〕に近い解決の仕方なれど、
その選択はどうにも悲しすぎて胸が痛くなってしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


監督・脚本の『エメラルド・フェネル』は
女優もこなすマルチタレントで、本作のヒロインの設定年齢とも
極めて近しいと聞く。

古くから隠然と存在するテーマを、
極めてイマ風な表現で見せているのだが、
こうした世情は、洋の東西を問わずなのだと、
同様の偏見は間違いなく、
自分の中にも存在するのだと改めて気づかされる。

もっとも、脚本の造り自体はかなりオーソドックスなので
中盤以降の流れはかなり読めてしまう恨みはあるのだが。