RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

コリーニ事件@チネチッタ川崎 2020年6月13日(土)

封切り二日目。

席数244の【CINE6】は一席空けての案内で
実際のキャパは122席。
客の入りは四割方といったところ

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ホテルのスイートルームで
老齢の大物実業家『ハンス・マイヤー』が銃殺される。

逮捕された、これも老齢の『ファブリツィオ・コリーニ(フランコ・ネロ)』は
犯行は認めたもののそれ以外、特に動機については黙秘を続ける。

国選弁護人として裁判にかかわることになった
新米弁護士の『カスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)』の心中は
しかし複雑だった。
何故なら被害者は幼い頃の自分を
父親同然に育ててくれた恩人だったから。

加えて『ハンス』の孫の『マイヤー』が、嘗て恋人だったことも
彼の葛藤に輪を掛ける。


気さくで、誰からも尊敬される大企業のオーナーが
なぜ殺されなければならなかったのか。

黙して語らない『ファブリツィオ』にも手を焼き、
恩人を殺めた男の弁護をする矛盾に悩みながらも
調査を進める『カスパー』はやがて
ある悲劇とそれを糊塗してしまった法律の陥穽に行き当たる。


主人公の立場は利益相反に当たらないのだろうか、との疑念は孕みつつ
この種の作品でお約束の法廷での丁々発止のやり取りはやはりスリリング。

大物弁護士の『リヒャルト・マッティンガー』が大きな壁として立ちはだかり、
敵役としての外連味も十分。

また謎解きの部分でのサスペンスの盛り上げ方も上々、
裁判の行く末と動機の解明を終盤まで固唾を飲んで見守ることになる。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


動機の謎を構成する要素は、一見とっつきにくいものの、
第二次大戦中から戦後の独逸に関する書物には、
頻繁に取り上げられているもの。

戦後処理の混乱期に登用されたある人物とその行為が、
今になっても禍根を残している。

しかし戦後八十年近くを経て、自分達の負の歴史を取り上げ
白日の下に晒す小説や映画が繰り返し生み出されるのは、彼の国に
過去に対して真摯な姿勢を持つ人間が多く存在する証左に他ならない。

翻って、その正反対の事象が多く見られる昨今の我が国は
寒心に堪えないと言うしかないのだろう。