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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

轢き逃げ-最高の最悪な日-@TOHOシネマズ錦糸町 2019年5月14日(火)

封切り五日目。

席数117の【SCREEN7】の入りは六割ほど。

その内容から客層は高齢に振れ、一方で
サラリーマンの姿が多いのは意外。
もっとも他人のコトを言えた義理ではないが。


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その事故は突然に起こる。
しかし起こした側の、以降の判断や振る舞いは頗る不自然。

もっとも咄嗟の出来事で
気が動転してしまったから、と
この時は観る側は都合よく解釈する。


そこから描かれるのは轢いて逃げた側の心理。

ひたひたと迫る捜査の緊張感を
しつこいくらいに長々と煽る。

ところが犯人側にたっぷりと感情移入させておいて、
突然に被害者側へと視点は切り替わる。

このスイッチの唐突さに
やや梯子を外された気分になってしまう。

以降は被害者側の悲嘆がたっぷりと描写される。

しかし一連の流れに、少々の割り切れなさを覚える。

何かの裏が潜んでいるんじゃないか、と。


全体を通した時に、
新人監督にありがちな過剰な語り口と
トリッキーな動きをするカメラが特徴的。

加えて、
元々『水谷豊』本人が、さほど芝居が上手いとも思えず、
それに輪を掛けて本編の出演者の殆どが
彼に倣うようにしっくりした演技とはなっていない
(除く、妻を演じた『壇ふみ』と老練な刑事を演じた『岸部一徳』。
この二人は格段に味が良い)。


「不慮の事故で身内を亡くした家族の悲哀」

「善良な犯罪者の贖罪」

「理不尽な嫉妬心」

「素人探偵の超絶的な推理と活躍」

「二転三転のストーリー」

「加害者家族のいたたまれなさ」

刑法第39条の問題」

「学内カーストの禍々しさ」

これらの要素がてんこ盛りに投入される。

が、一つ一つの因子となるエピソードは
薄く削がれてしまっており
表層的で深みに欠ける。

山あり谷ありのストーリーも
伏線はちゃんと張られ
目を瞑れる幾つかの瑕疵はありつつ
なかなかよく練られている。

一方で言いたいことが過剰に厚く折り重なり
膨満感に襲われる消化不良な中身になってしまっている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


これだけの多彩な素材を料理したいのであれば
本来なら監督の主戦場である連続ドラマでこそ生かされるべきであったろう。