封切り八日目。
席数72の【シアター10】の入りは九割ほどと盛況。
大卒なのに就活で落ち続け、
何を思ったからデリヘル嬢に志願。
にもかかわらず、初出勤でキモイオヤジが迫るアップ顔に
「とってもムリ~」と逃げ出し、
結果、同事務所でスタッフとして働く『カノウ(伊藤沙莉)』。
そこは、高圧的な店長が仕切り、
年齢も過去も様々な女性達が出入りする場所。
金への欲と人気ランクへの怨嗟が渦巻き、
混沌とした様相を呈している。
監督の『山田佳奈』は舞台出身とのことで
本作も2013年の初演モノの映画化と聞く。
なるほど、冒頭からそれっぽい造り。
実演では傑作と評されても、スクリーンに定着させると
凡作以下に成り下がるケースが多い中、
同様の轍を踏まねば良いがと
観る側の心中はあまり穏やかならず。
そこで働く彼女等のキャラは夫々立ち、
一方で背景や巻き起こる嫉妬はありがち。
男性従業員との関係性も含めある意味ステレオタイプな
いざこざが繰り広げられる。
尺の関係もあろうか、個々人を深く掘り下げるエピソードは過少で
なかなかに感情移入しづらい流れ。
終盤に向けても、多くの関係者にケリをつけさせようと
かなりムリをしてシーンを押し込んだ感があり。
もっとも今回を足を運んだ目的は
主演の『伊藤沙莉』を観ることにあり。
直近公開の〔ホテルローヤル〕ではJKを演じていたけれど、
今回は等身大により近い年齢の役柄で不自然さはない。
共に{グランドホテル形式}な展開は
単なる偶然かと独りほくそ笑む。
冒頭のシーンで彼女の腹が割れていることに先ずは驚き、
子役出身ながら多くの舞台人と交わる中で
きちんと身体を鍛えた結果だろうかと、勝手に思ったり。
微妙な立ち位置の狂言廻しをきちっと演じ切り
最後の泣きのシーン以外は満点の出来だったと
個人的な感慨。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
もう片方の主要な登場人物『マヒル』を演じた『恒松祐里』も
〔サクラダリセット〕の頃よりは格段に良くなっているし
かなりの存在感。
しかしラストの「どっか~ん」の科白は
〔告白〕での『松たかこ』にはまだまだ及ばない(笑)。