RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

十二人の死にたい子どもたち@TOHOシネマズ川崎 2019年1月26日(土)

封切り二日目。

席数240の【SCREEN7】の入りは九割ほどと盛況。

客層はそのタイトルか或いは出演者故か
かなり若年に振れている。


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自殺願望のある若い十二人の男女が
主催者の呼びかけに応じ廃病院に集まる。

この十二という数は
オリエント急行殺人事件〕かまたは〔十二人の怒れる男〕からの引用かと
ちょっと気になる部分。


彼等・彼女等には夫々「死にたい」理由があり
そのうちの幾人かはそれが「自殺」でないと意味を持たない背景がある。

おいおいと語られる、その理由と背景が物語のキーエピソード。
肉付けの仕方で後々の納得感がかなり変わって来るのだが
本作はかなり良く出来ている。


しかし集うのは十二人であるはずなのに
現場の集会室に全員が揃った時点で先客の死体が一つ。
つまり「13人いる!」わけだ。

どうせこの先死ぬのなら、委細構わず実行すれば良いモノを
そうは問屋が卸さない。

ここで先の「自殺でなければならない」理由が生きて来る。

シリアルキラーがこの中に紛れ込んでおり
その人物に殺されたとすると後々不都合が出来する。


そして犯人探しが始まる。

その中に居るであろう下手人を探し出し、
全員で無事に(?)自殺を遂げることができるのか。


原作はかなりの長編と聞いている。
それを二時間弱の尺に収めるためだろうか、所々でムリが生じる印象。

特に探偵役の『シンジロウ(新田真剣佑)』は勘が良すぎ。
たったあれだけの情報から真相を導き出すのは『ホームズ』だって不可能だろう。

『アンリ(杉咲花)』にしても同様で
そんな明晰な頭脳があるならもっと他のコトに使おうよ。


種明かしをされてみれば真相はあっけないほどだけど、
登場人物の全てを良く動かし、個々人にも印象的な役割を与えた脚本はお手柄。

でもまぁ果たして、あれだけの仕掛けが
人の眼を盗んで遂行できるかの疑問は残るのだが。

納得行きかねる言動も随所にあるしな。
何より僥倖に頼り過ぎの流れが大。


「実際に会ってみたら本当に死にたい人間は一人もいなかった」とは
最近世間を騒がせた連続殺人鬼の弁(ここでの引用が妥当かはなんとも言えないけど)。

「死にたい理由」は人様々で、
しかし本人にとっては切実な問題だから軽重は問えない。

だけれども、本編でのメッセージは
ある程度歳を経た自分にも十分に伝わって来る。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


ちょっと足りないJK『マイ』を演じた『吉川愛』が
脚本と演出の助けを借りて上々の仕上がり。

科白のトーンといい間といい、素晴らしい。


そして事前のフライヤーには『秋川莉胡』としてクレジットされている『リョウコ』役は
実は全くの別人。

劇中にそれっぽい前フリはあったものの
こんなカタチで出て来るなんて・・・・。
嬉しい余禄だ。