RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

判決、ふたつの希望@TOHOシネマズシャンテ 2018年9月1日(土)

封切り二日目。

席数190の【SCREEN3】はほぼほぼ満席。


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そのきっかけは些細なことだった。

違法建築のベランダの排水口から噴き出した水を
もろに被ってしまった工事主任『ヤーセル』。
その抗議に訪うも、
家の主『トニー』に取り付く島もなく追い返される。

そこからエスカレーションする両者の対立は
やがて国家規模の争議にまで発展する。


二方をシリアに囲まれ、もう一方はパレスチナに面し、
複数の宗教・民族が混在するレバノン

パレスチナからの・シリアからの難民、加えて内戦と、
国政は常に安定性を欠き、ちょっとの事でも
民心が争乱する火種になるには十分なのだろう。


しかし本作は、そういった国内的背景を知らずとも
論点を十分に理解できる工夫が十二分になされている。

あまつさえ、ほんの些事が大事に至ってしまうのは
我々の身近でもままあることではないか。


雪だるま式に事態が収拾できなくなる流れは
スリリングの一言。

そこに先に挙げた民族対立や難民差別が絡んでくるのだから
余計に複雑な様相を呈して来る。


その過程で、原告である『トニー』に共感できない感情を持ったり、
彼の弁護人に対しても同様の気持ちに一旦はなるものの、
幾つかの事実が明らかにされることで、その心証は二転三転する。

それは被告である『ヤーセル』についても同様、
思いもしない過去が顕わになる。

法廷劇としての外連味も十分に持ち合わせている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


自分達が起こしてしまった混乱に戸惑いつつも、
判決後は安堵と得心する余韻を残したエンディングは素晴らしい。


それにしてもフライヤーにある
「ただ、謝罪だけが欲しかった。」の一文は
二重の意味に取れ、全体を俯瞰した時に
ミスリーディングを招きかねない危ういものだと
観終わってからつくづく思う。