RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ゲット・アウト@TOHOシネマズシャンテ 2017年11月17日(金)

封切り四週目に突入。

席数190の【CHANTER-3】の入りは四割ほど。


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日本でもアメリカ国内で連綿と続く
黒人への人種差別は割りと知られている。

なので本作、プロットを聞き
タイトルを目にした時には、
良くある「差別モノ」かと見当を付けた。

しかし、それは物語の中盤以降
あっさり裏切られる。
待ち受けていたのはあまりにも予期せぬ展開。

伏線もきっちりと張られ、
見る側の勝手な思い込みは見事に逆手に取られる。


黒人の青年写真家『クリス(ダニエル・カルーヤ)』は
白人の恋人『ローズ(アリソン・ウィリアムズ)』の家へ挨拶に行くことになる。

気乗りしない『クリス』に『ローズ』は
両親はリベラルであり、肌の色で偏見は持たないと勇気づける。


やがて着いた彼女の実家で二人は歓待を受けるが
『クリス』はなんとも言えない違和感に襲われる。

それは『ローズ』の家族のみならず
同家の二人の黒人使用人にも言えること。

この一連の描写が頗る上手い。

最初は『クリス』の一人称として語られるので
本人が異なる環境にナーバスになっているだけじゃ?と
観客も戸惑う。

しかし中途から三人称の視点が紛れ込み
その不可解さに もしや? との思いを持たせるのだが、
その背景には、あくまでも差別があるんだろうと
都合良く判断してしまう。

制作者サイドの「してやったり」の声が
聞こえて来そう。


タイトルの「GetOut」は、実は話中では一度しか発せられない。

しかも主人公とはあまり関係の無さそうな第三者から
唐突ではあるものの、流れとしては無理のない文脈の中で放たれる。

なので観客はすんなりと受け入れ、疑念を持つことはないが
最後のシークエンスで、言葉の重みをずしんと理解する。

ああ、こ~ゆ~意味だったのか!


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


設定に若干の荒唐無稽さはあるけれど、
作品の価値自体を大きく歪めるほどではない。

黒人を卑下する思惑を逆手に取り、
その実、礼賛する文脈も潜ませる。

本作の作り手たちはどこまでも意地が悪い。