RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

グリーンブック@TOHOシネマズ日比谷 2019年3月1日(金)

本日初日。

席数489の【SCREEN12】の入りは八割ほど。

朝イチの回、加えてヘッド館と言うこともあり、
壁際には興行サイドと思われる人がずらりと並んでいる。

入りの状況と客層、反応の確認かな。

この結果を以って色々と今後が変わって来るのだから
真剣度はいかほどのものか。

そして動員等もあるのかもね。


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ウエルメイドなバディ物であり且つロードムービー


カーネギーホール」に住む天才ピアニストの
『ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)』。

南部への演奏旅行に際し運転手兼ボディガードとして
イタリア系の『トニー(ヴィゴ・モーテンセン)』を雇う。

時は1960年代初頭、黒人への差別は厳しく
アメリカ南部では特に激しいのは簡単に予想できること。

にもかかわらず彼は何故そこへ行くことを選択をしたのか。


それにしても対照的な二人。

『ドン』は黒人ながら知識や学識もあり折り目正しく社交界にも知己がおり、
一方では孤独で、自身のレゾンデートルにも迷いが見える。

それを象徴する印象的なシーンが旅の中途に挿入される。
自分は黒人であって黒人ではない事を再認識する場面。

身なりの良さとか、そう言った単純なことではなく、
存在自体が遊離してしまっているわけだ。


他方の『トニー』は粗野で暴力的、簡単な綴りを間違えるくらいに学も無い。
が、家庭には恵まれ、近隣には親族も住み関係は良好だ。

あまりにも異なる背景に、当然のコトながら当初生ずる対立。

しかし、それを乗り越え、次第に理解が深まる過程を描くのに
積み重ねられるエピソードの数々。

思わず笑ってしまうもの、他人事ながらも立腹してしまうもの。
硬軟取り混ぜ、組み立ての仕方が絶妙だ。

『ドン』がツアーの場所として南部を選択した理由を知った時に
よりそのシンパシーは強くなる。


そして旅が無事に終わり、目出度し目出度し大団円
で済まさないのが本作の良く出来たところ。

作中に挙げられる黒人差別のエピソードは枚挙にいとまがない。
よくまぁ、こんなことを考え付いたものだと、変な意味で感心する。

旅に出る前は黒人に対しての差別感を持っていた『トニー』でさえ
義憤を覚えてしまうほどだから。

また白人であるブロンクス出身の彼ですら、
赴く地方や対する人によっては差別される側になっしまうことのおかしさ。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


それでもこのような形で判り合えれば、
いわれのない差別もやがては無くなるのかもしれない。

苦さが口の中に残りながらも、
最後は雇用を超え構築された二人の信頼関係に
心がほっと暖かくなる。