RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

湯を沸かすほどの熱い愛@チネチッタ川崎 2016年11月5日(土)

封切り八日目。

席数129の【CINE2】の入りは六割ほど。

何故だが判らないが、客層はかなり高齢に振れている。


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どうしてだろう、家族の有り方について
著述する作品が直近で多いのは。

一例としてこれだけど
日本人離れした仕草の数々と後味の悪さがかなりのモノなのは
先に述べた通り。

翻って本作、銭湯との純日本的な場に加えて、
兎に角、泣かせ処が満載。
場内の其処此処から嗚咽の声が頻繁に聞こえ
斯く言う自分も・・・・。

それも、人を死なすコトで泣かす
安直で直情的な手法ではなく、あくまでも人と人との関係性にまで
踏み込んで泣かせるかなり凝った造り。


夫がそれこそ湯気の様にいなくなってしまい、
稼業の銭湯は一年近く休業状態。
近所のパン屋のパートで糊口を凌ぐものの
高二の娘はクラス内でイジメに遭っている様子。

そんな四面楚歌状態の『幸野双葉(宮沢りえ)』が末期癌で
残り数か月の余命を告知されてしまう。

そこからは『双葉』の面目躍如、
八面六臂の動きを見せるのだが・・・・。


観客は冒頭の流れから、所謂「難病モノ」との当たりを付け、
実際に展開も、ほぼ想定通りに進む。

夫を見つけ出し
銭湯を再開し
娘に強いココロを持たせる。

ところが中途から、物語は急カーブ。
思わぬ展開に。
それはもう、大どんでん返しと表現しても良いくらい。
声には出さないが、え~っつ思い、そして
やられた~、と素直に頭を垂れてしまう。

そこで我々は、母と娘、父と娘、そして夫婦間で交わされていた
会話や日常行為の全てが、実は伏線であったコトに気付く。
この関連付けが実に巧い。


そして全ての仕掛けが開陳されても、
まだまだそれで終りではない。

終盤には最大の見せ場が用意され、
観客は更に感涙を搾り取られてしまう。

なんて緻密な脚本と演出。
素晴し過ぎるぞ『中野量太』監督。


更にラストシーンに本映画のタイトルが被される時に、
そこで何が起こっているのか、と
タイトルが孕む本当の意味を理解し、再度驚愕する。

いや元々、銭湯の煙突が最初に映された時から
『黒澤』的な魅せ方の予感はしてたんだけど
まさか此処までやるとはね。

そして、これも、きちんと下地が
有ってのことなんだから。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆☆。


観る前には、しっかり者の母親に『宮沢りえ』は良いけれど、
夫役に『オダギリジョー』はどうなのよ、と思っていた。

ところがこれがどんぴしゃ。優男のとことんダメダメな側面を
上手く滲み出している。


そして娘を演じた『杉咲花』が素晴らしい。
とと姉ちゃん〕の時よりも数段、良いのではないか。
やはり等身大に近いこともあろうか。

そして『花』ちゃん、とっても大胆なコトをしてしまい、
おぢさんは正直、かなりドキドキしちゃった。