封切り四日目。
席数98の【SCREEN3】の入りはほぼ満員の盛況。
ジャズピアニスト『南博』の回想記が原作と聞いている。
オフィシャルサイトに掲載の日記の書籍化、と。
そのものは続編も出版されていることから
それなりの面白い著作なのだろう。
が、それを映像化すると、
ここまでつまらなくなるのかと、
驚いてしまう一本。
監督の『冨永昌敬』は直近で
〔あの頃。(2021年)〕や〔素敵なダイナマイトスキャンダル(2018年)〕を
撮っているわけだが、それよりも数段堕ちる、悲しいほどの出来。
94分尺の小編乍ら、体感は二時間強にも感じてしまい、
全体的に冗長。
一つのエピソードを最初から最後まで引き延ばし活用していることが
余計にそのように感じさせる要因かもしれぬ。
怪しげなバンドマスターやバンド仲間、
銀座の夜を彩るホステスさん達、
そして、組織の親分や幹部、それと曰くがありそうなチンピラ。
登場人物は一見魅力的も、
いずれもが散発的にしか機能せず、
加えてギャグにしたいのかシリアスに使いたいのかも判然とせず、
中途半端な限り。
物語りは、主人公がクラシックピアノで師事する『宅見』から唆され、
銀座のクラブで働き始めるところから始まり、
アメリカへのジャズ留学を決意するところで終わる。
『南博』を演じるのは『池松壮亮』、
入りたての頃と、ある程度年数の経った頃の、ややトリッキーな二役。
それが一晩の出来事で交錯する仕立てはユニークも、
却って人物の役割が見えにくくなる恨みがあり。
また、長じた頃のキャラクター付けも、最初は随分とクールに見えたのが
最後の方ではドタバタを演じる端役にも感じられる一貫性の無さ。
不可解なことこの上なし。
評価は、☆五点満点で☆☆☆。
四丁目辺りから一丁目をロングで捉えるシーンは印象的。
夜空を背景に煌々と輝く看板の文字は「Brillia」。
しかし舞台の時代1988年当時なら
ここは「INAX」であるべきではないか。
魂は細部に宿ると言うが、こうした気遣いの無さが、
画面の全てを支配しているように見えてしまう。