RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

白鍵と黒鍵の間に@TOHOシネマズ日比谷 2023年10月9日(月)

封切り四日目。

席数98の【SCREEN3】の入りはほぼ満員の盛況。

 

 

ジャズピアニスト『南博』の回想記が原作と聞いている。

オフィシャルサイトに掲載の日記の書籍化、と。
そのものは続編も出版されていることから
それなりの面白い著作なのだろう。

が、それを映像化すると、
ここまでつまらなくなるのかと、
驚いてしまう一本。

監督の『冨永昌敬』は直近で
〔あの頃。(2021年)〕や〔素敵なダイナマイトスキャンダル(2018年)〕を
撮っているわけだが、それよりも数段堕ちる、悲しいほどの出来。


94分尺の小編乍ら、体感は二時間強にも感じてしまい、
全体的に冗長。

一つのエピソードを最初から最後まで引き延ばし活用していることが
余計にそのように感じさせる要因かもしれぬ。

怪しげなバンドマスターやバンド仲間、
銀座の夜を彩るホステスさん達、
そして、組織の親分や幹部、それと曰くがありそうなチンピラ。

登場人物は一見魅力的も、
いずれもが散発的にしか機能せず、
加えてギャグにしたいのかシリアスに使いたいのかも判然とせず、
中途半端な限り。


物語りは、主人公がクラシックピアノで師事する『宅見』から唆され、
銀座のクラブで働き始めるところから始まり、
アメリカへのジャズ留学を決意するところで終わる。

『南博』を演じるのは『池松壮亮』、
入りたての頃と、ある程度年数の経った頃の、ややトリッキーな二役。

それが一晩の出来事で交錯する仕立てはユニークも、
却って人物の役割が見えにくくなる恨みがあり。

また、長じた頃のキャラクター付けも、最初は随分とクールに見えたのが
最後の方ではドタバタを演じる端役にも感じられる一貫性の無さ。

不可解なことこの上なし。


評価は、☆五点満点で☆☆☆。


四丁目辺りから一丁目をロングで捉えるシーンは印象的。
夜空を背景に煌々と輝く看板の文字は「Brillia」。

しかし舞台の時代1988年当時なら
ここは「INAX」であるべきではないか。

魂は細部に宿ると言うが、こうした気遣いの無さが、
画面の全てを支配しているように見えてしまう。