RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

MOTHER マザー@TOHOシネマズ川崎 2020年7月4日(土)

封切り二日目。

席数240の【SCREEN7】は現状では半分の案内なので
実質120席。客の入りはその六割ほど。

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長澤まさみ』好きにはなんとも複雑な気持ちになる一本。

年齢的にはぼちぼち不思議でないにしろ、
たぶん映画で初めて演じる母役はとんでもない毒親

予告編を見て新境地だね、などと思っていたら、そこは「PG12」、
なんと濡れ場が複数回ある。

いや勿論、おっぱいはおろかパンツも見えんのだが、
随分と振り切ったものだと、違う意味で感心。


『キングダム』の時のシャープな顎の線、
『コンフィデンスマンJP』でのふっくらしながらも張のある線、
それが本作では弛みすら見られ、自堕落な暮らしと
老いを感じさせる造作。

一方で、なまじ顔立ちが整っているので、罵詈雑言を吐くシーンでも
美しく見えてしまうのは若干困りものだけれど。

役柄に併せて体形すら変えるのは
ジェイク・ラモッタ』を演じた『デ・ニーロ』以降のハリウッドの潮流ながら、
彼女も随分と頑張ったものだと思う。

あ、もっとも、日本にも『鈴木亮平』が居たか(笑)


肉親を利用し、自分達に情を掛けてくれた人を利用し、
生きずりの他人も利用する。

時に甘え、時に拗ね、時に泣き、時に掻き口説き、時に怒鳴る。

ある種の男には蠱惑的な磁力を発揮し取り入る。

こんな人間が近くに居たら、どんなに大変なことになってしまうだろう
けして関わり合いにはなりたくない共感できぬ右代表の人物造形。

でも実在したのだから・・・・。


とことん倫理を外した行為を続け奔放に生きる『秋子』は
両親や妹からも絶縁を言い渡され、
不義理をした知人には寄る辺もなくなり次第に追い詰められていく。

しかしそんな彼女でも一人息子の『周平』だけは手放さない。

もっとも、便利に使いたいとの思いや、
子供の方が金の無心が効くとの打算は透けて見え、曰く
「自分が生んだ子供をどうしようが私の勝手」。

一方の『周平』も「自分がいないとお母さんは生きていけないから」と
傍にとどまり続ける。

共依存との表現もあったけれど、
幼い妹の『冬華』がいなければ、はたしてその関係は続いていたろうか。


蛸壺の様な狭い世界で暮らす二人が
追い詰められて選ぶ手段は
どう考えても道理からは外れている。

いや、この二十年間の『秋子』の選択は全てそう。

外のからの援けを全て失い、自家撞着に陥った行動が導く悲劇。


しかし最後まで、息子は自分を裏切らぬとの確信はなんともあっぱれ。

ただ、その代償として青春の十数年を奪ってしまうことへの後悔の念が
欠片も見えぬのには怖気をふるう。

ラストシーンに至っても微塵の光明も見えず、
二人はこの先、どこまで堕ちて行ってしまうのだろう。

あまりの救いの無さに暗澹とする。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。