RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ブレット・トレイン@TOHOシネマズ日比谷 2022年9月4日(日)

封切り三日目。

席数456の【SCREEN1】の入りは八割ほどと盛況。

 

 

ほんの少し前までは「世界一運の悪い男」の称号は
ジョン・マクレーン』の独壇場だった。

何故か行く先々で事件に巻き込まれ、
「なんで俺がこんな目に・・・・」とぼやき
身体もボロボロになりながら事件を解決する。

その数、実に五回。


しかしこれからは、その呼称を本作の主人公
レディバグ(ブラッド・ピット)』に譲らなければならないかも。

長年の殺し屋家業の果てに精神を病み、
復帰後第一回目の軽い仕事しとして請け負った運び屋のハズが
なぜかしら世界中の殺し屋が次から次へと襲い掛かって来る。

しかもその舞台は、停車駅の少ない弾丸列車の中。

果たして主人公は、目当てのブツを確保し、自分の身を守りながら、
身に覚えなく襲われる謎を解明できるのか、と
三重のスリルを孕みながら物語りは(列車同様)疾走する。


ヒッチコック』お得意の、所謂{巻き込まれ型}にカテゴライズすれば良いか。

本来であれば巻き込まれるのは罪の無い一般人だが、
なに、殺し屋が巻き込まれても問題は無かろう。

そして、薄皮が剥がれるように真相が顕わになる度毎に、
死体がごろごろと転がり出す。

しかしそれらのシーンにシリアスさや悲壮感は皆無。
ほぼほぼギャグさながらのシチュエーションで、
彼等・彼女等は排除されて行く。


そうした場面にBGMとして流れるのは、
1970~80年代のご機嫌なナンバー。

冒頭の『サタデー・ナイト・フィーバー(1977年)』を思わせるシークエンスを筆頭に、
日洋混交の楽曲群は、懐かしいと共に、
なんてその場にジャストフィットなのだろうと感心しきり。

中には『カルメン・マキ』の〔時には母のない子のように〕まで入っていたりで、
よく発掘してきたものだ(1969年だけど)。


また全体を貫く、キッチュさも堪らない。

意図的なB級っぽさ全開で、
しかし要所要所にお金を掛けているのは明白。
なんてったってスタジオ内に、日本の駅を再現しちゃうんだから。

列車の車内も、間違った日本語の無い
しっかりした出来。

走行線路が時に左側と右側が入れ替わったり、
富士山の位置関係がおかしかったりとの難はあるけれど、
多少のコトは目を瞑ろう。

それほどテンポの良さに、全体が満ち満ちている。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


一駅だけのミッションだったはずなのに、
中途の停車駅で降りるに降りられなくなるシチュエーション造りと、
幾つもの伏線が最後に綺麗に回収されきるさまは、
観ていて気持ちが良いもの。

これは偏に、原作者の『伊坂幸太郎』の功だろう。
元々、こういった構成が上手い人だから、どの作品でも。