封切り四日目。
席数315の【シアター3】の入りは一割ほど。
漫画の原作宜しく、
先ずはヲタクの在り様をネタにしたエピソードが語られる。
そしてそのパートの〆として、モノローグを歌詞に仕立て
ミュージカルっぽく撮ったシーンが添えられる。
これで一つのシークエンスが終了。
あとはこれを繰り返し、繋いで物語りを紡ぐ。
ちょっとみ前進がなさそうに見えても、
主人公二人の心情と関係性が少しづつ変化して行く。
この機微の表現がなかなかに巧い。
実存のヲタクの人が見るとどう感じるかは判らないが、
少なくともそうでないと思っている自分にとっては
彼等・彼女等の生態の描写は頗る面白い。
好きな対象への過剰な拘り。
独特な形容表現。
監督はそれらの判り易い特徴を上手く切り出し、
研ぎ澄ました上でぽんぽんとテンポ良く提示する。
このあたりの見せ方が、この種の軽いコメディが得意の『福田雄一』の面目躍如。
上映中に笑いが途切れることはない。
アニメやゲームにとどまらず、パロディの引用元も多岐に渡り、
製作者サイドの博覧振りはこちらの知識も試されているよう。
中には〔オペラ座の怪人〕、それも舞台演出からのものまであるんだから。
そしてその種の仕掛けが最後の最後まで続くから気を抜けない。
〔天空の城ラピュタ〕の有名シーンを頂いたイラストを
さっと忍び込ませるのもいたずらごころか。
また一種、ボーナストラックとでも言うべき
エンドロールで流れる〔残酷な天使のテーゼ〕の上手い翻案楽曲。
それが為か全体的に〔新世紀エヴァンゲリオン〕からの借用が
随分と多い印象。
が、本作の一番の見所は
真円に近くまで眼を見開いて
唄って踊って八面六臂の『高畑充希』の活躍ぶり。
彼女をキャスティングしたことで
映画の価値は一段上がった。
もっとも監督にしてみればは〔女子ーズ〕で既に使っているわけだから
薬籠中の起用なのだろう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
が、全体として見た時には散漫な印象、
後味はあまり良くはない。
それはどうやら先に挙げたミュージカルっぽいシーンの挿入が
足を引っ張ているよう。
余韻を残すための仕掛けとは思われるも、
却って纏りを欠く結果になってはないか。
歌とダンスの場面がそこそこあっても、
これを{ミュージカル映画}とカテゴライズするのにはムリがあろう。
それらはあくまでも「受け」であり、
ヲタクの生活描写こそが「攻め」で主たるものなんだから。