封切り二日目。
席数98の【SCREEN6】の入りは六割ほど。
大まかには{ミュージカル}にカテゴライズされようか。
それにしてはダンスシーンはタップが少々だけと
やや寂しい気もするのだが。
とは言え、監督の『真壁幸紀』始め制作サイドは
それらしいこだわりを随所に詰め込む。
一つは上映時間92分の尺。
これは
〔雨に唄えば(1952年)〕103分
〔イースター・パレード(1948年)〕107分
〔バンド・ワゴン(1953年)〕112分
などの昔の名作の短尺に倣ったものだろう。
サイレント時代を描いた
〔アーティスト(2011年)〕も100分だったし。
一方で
〔ラ・ラ・ランド(2016年)〕128分
〔ウエスト・サイド・ストーリー(1961年)〕152分
だったりするのよね。
もう一つはインターミッション。
舞台の{ミュージカル}はほぼほぼ二部建てで
中途、幕間が挟まれるお約束。
それをきっちり踏襲し、
「休憩」を挟み込んだのには笑った笑った。
一見、意味不明なシーンに見えて、
実際は形式をちゃんと押さえて全体を構成しようとの試みは
意気にも感ずる。
そうしたカタチを先ずは整えたうえで
展開されるのは昔ながらの「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語り。
上司との諍いで奈良県大和郡山市に左遷されたエリート銀行員『香芝誠(尾上松也)』が
金魚すくい屋の娘『吉乃(百田夏菜子)』に一目惚れし・・・・、
との成り行き。
朴念仁の『誠』が恋に目覚めたことで、
人間として一回り成長する姿を描く。
楽曲が良いのは大前提、その上で、
見せ方にも幾つかの機軸の打ち出しが。
歌詞をテロップで出したり(〔モテキ(2011年)〕のイタダキかな?)、
それがラップの場合にはスーパーインポーズ風に処理したり。
が、一番の仕掛けは地の科白とモノローグの部分をわざと曖昧に見せていることで
これが主人公が変容した時の鍵となる場面に効果的に。
主役は勿論、準主役の二人、更には脇を固める出演者まで
ミュージカルが主戦の俳優・女優や歌手を招集したことで
歌唱のシーンも安心して観ていられる、
精神的にも良い一本に仕上がっている。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。
気になって原作のコミックをちょっとだけ「立ち読み」したのだけれど、
大まかな設定はそれとして
細かい部分は映画の仕様にかなり変えているのね。
それでも違和感なく観ていられるのは手柄だなぁと感心。