本日初日。しかも朝イチの初回。
席数257の【SCREEN9】の入りは七割ほど。
1917年と言えば「第一次大戦」も終盤。
独逸軍は西部戦線で守勢となり、一部では撤退も。
しかし後退したと見せ、実際は偽計を巡らせ、
地の利を得た場所で待ち伏せ
追っ手を叩くのもまた用兵の妙。
それを事前に察知した『エリンモア将軍(コリン・ファース)』は
前線の『マッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)』に攻撃中止を命ずるべく
若い二人の兵士を伝令の任に付ける。
まだ無線の無い時代。頼りの電話線は寸断され
連絡手段は途絶している。
選ばれた『ウイル』と『トム』は敵中を突破し、
明朝の突撃開始までに進撃中の部隊へ無事に辿り着き
将軍の命令を伝えることができるのか、が主となるサスペンス。
ところが本邦の配給サイドは
「驚愕の全編ワンカット映像」とのキャッチを前面に出す。
しかしこれは、はっきりと羊頭狗肉。
そう言われたらしっかり見破ろうと思うのが人の常。
画面に喰い入れば、複数個所のつなぎ目がちゃんと判る。
元々デジタル技術を使い疑似的にワンカットに仕立ててるんじゃ、と予想してたけど
きっきりと判るほどの境目は、制作サイドの意図はそこにはなかった、と言うことだろう。
勿論、超絶的な長回しのインパクトは凄まじい。
緊迫感を盛り上げる薬味として十分に機能している。
うねうねとした塹壕の中を時に後ろから、或いは前に回っての撮影。
荒涼とした戦場を駆け抜ける際にもカメラはしっかりついて回る。
呼吸を合わせて動くエキストラ、或いは家の壁に空いた穴の位置まで
綿密に計算された所産に驚愕する。
しかし中途から、
仕掛けの見破りはどうでもよくなるほど画面に引き込まれてしまう。
次々と襲い掛かる困難は事前の予想を遙かに超、
生きて辿り着けるのか?に加え、時間に間に合うのか?も
重ねての要素として立ち上がって来る。
もう、バクバクとした心臓の鼓動が止まらない。
評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。
が、全てのエピソードが語り終えられた時に心中にわだかまるのは
どうしようもない虚無感。
それは二人の兵士が戦場で見た景色そのものに由来する。
川を漂う大量の兵士の死体。
撤退する際の焦土作戦のため廃墟となった町や村。
人だけでなく家畜にまで及んだ殺戮の痕跡。
何れも戦争による魔的な産物。
二人に寄り添い、混乱や不安・恐怖を共時に体験した我々の眼前に
人が起こす狂気を改めて突き付ける。