RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ヤクザと家族TheFamily@TOHOシネマズ錦糸町 オリナス 2021年1月29日(土)

封切り二日目。

席数172の【SCREEN1】の入りは七割ほど。

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1999年-2005年-2019年の三つの時代を通して、
義理と人情を重んじる任侠団体一家の盛衰が、
その構成員である一人の男を軸に語られる。

恫喝や得物を使った暴力シーンはありはするものの、
例えば〔アウトレイジ〕などと比べれば遙かに過少。

抑えた描写をメインに人間の関係性の機微を情緒たっぷりに味あわせることが
本作の主線。

なのできったはったの大立ち回りや外連味を期待すると
肩透かしを喰った気になるかも。


「暴対法」の施行と地方自治体の条例により
所謂「暴力団員」の生活は、憲法が保障する基本的人権とのせめぎ合い。

公共サービスですら、約款に「反社会的勢力の排除」はうたわれており、
言ってみれば、組事務所には電気さえ供給されぬ建て前。

「最低限の生活も送れないの?」との疑問には
「だったら(組織を)抜ければいいじゃん」が法の回答で
それは本作中でも触れられている通り。

もっとも抜けたとしても、社会の目は何時までも厳しい。


にもかかわらず勢力を伸ばす一群も厳然として存在するわけで、
鶴田浩二』の〔傷だらけの人生〕じゃあないけれど
「筋の通らぬことばかり」で「どこに男の夢がある」のか判らぬイマイマの世相。

ただ真っ当に生きることの選択が難しく、
災いが家族や係累にまで及ぶのは、
本作で扱われている運命共同体に限ったことではない。

コロナの感染だけでも、似たような仕打ちは行われており、
どうにも世間と言うのは根っから不寛容なものなのかも。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


制作サイドにしたって、反社勢力を肯定しているのでは当然無いわけで、
あくまでも一つの類型として表象しているに過ぎないだろう。

暴力や陰謀で物事を解決するのではない社会こそが理想、
同様にいわれない誹謗中傷やゴシップを面白半分に消費しない世間も同様か。