RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ベルファスト@TOHOシネマズ川崎 2022年3月26日(土)

封切り二日目。

席数112の【SCREEN8】の入りは六割ほど。

 

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冒頭、イマイマのベルファストの空撮が流される。

揃った街並み、大きなドライ・ドッグと
その近くには船の形を模した緑地帯。

一年戦争」の際には「ホワイトベース」も羽を休めた美しい港湾都市は、
その昔に血なまぐさい騒乱が有った片鱗すら見当たらない。

そして時代はカラーからモノクロームへと、
一気に五十年以上前に駆け戻る。
その転換がまた見事なのだが、
この頃の写真は皆々白黒だったよねぇ。


そこにあるのは洋の東西、或いは今昔を問わず、
人々のほのぼのとした営み。

縁者は近くに暮らし、
ご近所さんとの仲も睦まじい。

街角では子供が遊び、大人は世間話に花を咲かせる。
ああ、自分の周りにもこういった景色はあったよな、と
気分も良くなっていたのに・・・・。


突然の怒声がそれを打ち壊す。

プロテスタントカトリックの宗教を軸にした諍いは、
外見も使う言語も同じ人々が主義・主張を巡って対立し、
暴力に訴えることで、
地域社会をも断絶させてしまう。

勿論、本作の主人公である『バディ』の家庭でも例外ではない。

元々さほど裕福でもない一家は、コトを契機に
更に父母の言い争いは激しくなる。

街を捨て、ロンドへと移住したい父親と
それを善しとせず、あくまでも住み慣れた場所で暮らしたい母親と。


そんな中でも九歳の少年の日常は温かい。

家族で行く映画館での楽しい時間。

祖父母の愛にも包まれ、
学校では好きな女の子の隣の席に座るため
勉強も奮闘する。

時には悪い仲間に唆されもするけれど、
誰もが一度は通る道ではないか。


しかし、睦まじく暮らすことを
社会や世間は許さない。

ある事件をきっかけに一家は究極の決断を迫られる。

それは胸がぎゅっと鷲掴みにされるような辛さに満ちたものなのだが・・・・。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆★。


半自伝的な経験を盛り込んだ、少年が大人への階段に
ほんの少しだけ足を掛ける、素晴らしい一本。

ケネス・ブラナー』が監督/脚本/製作と八面六臂の活躍を見せ、
その根底にあるのは、自身のレゾンデートルである故郷への愛情と想いのたけを載せた賛歌。

辛い過去もあったろうけど、往時の人々に向ける眼差しは
どこまでも優しい。

そしてもう一つ、幼い頃の記憶の描写が、とっても堪らない。

劇中に差し込まれる
サンダーバード〕や〔宇宙大作戦〕のTVシリーズの懐かしさったら!

どうやら彼は自分とまるっきりの同時代人なのね。