封切り五日目。
席数89の【シアター8】は一席空けての案内なので
実質45。
その四割は埋まっている印象。
客層は高齢の男性(自分も含め)がほぼほぼ100%。
バイク窃盗団の内部抗争に巻き込まれ
相手を追ううちに誤って警官を射殺、
指名手配犯となった男『チョウ』。
『チョウ』の幼馴染で売春組織の元締めの『ホア』に頼まれ
男に接触する水浴嬢の女『リウ』。
二人の運命が中国の地方都市「鵞鳥湖」で交差する。
その「鵞鳥湖」も再開発の波から取り残され、
犯罪者が跋扈する場所。
『チョウ』は自身に懸けられた懸賞金を警察から騙し取り、
五年間顔を合わせていない妻と幼い息子に渡そうと画策。
一方、官憲だけでなく、窃盗団内部で恨みを持つ組織も彼を追い
三つ巴となりそこで入り乱れる。
登場人物の造形も含め
画に描いたようなフィルムノワールの世界。
主要な出来事は夜に集中して起きるも、昼の場面ですら
記憶に残っている印象はモノクローム。
その中に鮮やかな色彩のシーンがフラッシュの様に挟み込まれ
思わずはっとさせられる。
語り口もクライムサスペンスの王道を行くもの。
場面は過去と今が場所を違えて入れ代わり現れる。
それゆえ、頭の中での時系列の整理が必要。
その手掛かりが女の服装。
赤や紺の判り易い色味で観る者のよすがになる。
最初から捕まることが目的の犯罪映画は珍しい。
よってここでのカギは
自身を付け狙う犯罪者集団から男が逃げ切れるのか、と
女が果たす役割と関わり。
先を見通せない物語りは、独特の泥臭さを滲ませながら、
終始バイクのエンジン音と共に終焉に向かう。
評価は、☆五点満点で☆☆☆★。
二時間弱の尺しかないのに、妙に冗長さを感じさせるのは
その語り口ゆえ。
実際は数日の出来事が、より長い時間の経過に感じてしまうほど。
これを計算づくでやったのだとしたら、
監督の『ディアオ・イーナン』はなかなかのしたたか者。