RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ノイズ@TOHOシネマズ川崎 2022年1月29日(土)

封切り二日目。

席数147の【SCREEN2】の入りは八割ほど。

 

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その男さえ来なければ『泉圭太(藤原竜也)』の将来は
希望に満ちたものになっていただろう。

自身が栽培する「黒無花果」がマスコミにも取り上げられ、
過疎化に悩む猪狩島は、それを観光と殖産の起爆剤にしようとしている。

莫大な地方創生助成金交付の目途も付き、
島の救世主としてもてはやされていたのに・・・・。


事前の予告も無しに、『圭太』の農場への就職依頼に
保護司の男が幼女強姦殺人の罪で服役していた『小御坂(渡辺大知)』を伴い
車で島を訪れたことが事件の発端。

それを契機に事件が連続し発生、『圭太』の日常は狂い出す。


当初の死体は単体だったのだ。
それを前に右往左往する当事者たち。

なので
一つの死体を巡る騒動を描いたブラックコメディ
〔ハリーの災難(1955年)〕を思い出しニンマリしていたら、
その後は、人口も少なく、普段は犯罪も無い島の中で
死体がごろごろと転がり出す。

最初の内はシリアスな展開も、
三つ目四つ目の殺人ともなると、ほぼほぼギャグにさえ見えて来る。

しかし最後の最後まで、この始まりの死体が纏わり付き
疫病神のように主人公たちを苦しめる。


そうした犯罪面での起承転結とは別に
ストーリーには、地方が抱える多くの悩みや矛盾も盛り込まれる。

過疎の問題は勿論として、ちょっと光明が見えれば
それをもてはやし縋り付くどん詰まりの地方行政。

或いは、住人が皆々顔見知りで、他家の内情までをも微細に知り、
余所者の介入は許さない、奇妙な団結力の一方で閉塞感に満ちた日々の暮らし。

それらあまりにも多くの要素を盛り込み過ぎたため、
全体的に印象がぼやけ、
ミステリーの要素は薄まった結果、
最後のシークエンスさえ唐突に感じてしまう。


評価は、☆五点満点で☆☆☆★。


一番恐ろしいのは、仲間と信じた隣人の薄黒い感情との教訓を以って
物語は幕を閉じる。

一見、同床の共同体に見えても、内実はわだかまりが渦巻き、異夢をかこつ人々の想いが
捌け口を探し噴き出す。

その結末も含め、全体的にぎこちない語り口の印象を受けてしまうのだが。