RollingStoneGathersNoMoss文化部

好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

ロマンスドール@109シネマズ川崎 2020年1月25日(土)

封切り二日目。
席数118の【シアター5】の入りは八割ほど。

客層は『高橋一生』のファンと思われる女性が
かなりを〆る。

f:id:jyn1:20200127072651j:plain


タナダユキ』の最新作は「PG12」のレイテイング。

てっきり『蒼井優』がおっぱいでも見せるのかと思ったら
まるっきりそんなことはなく、勿論
濡れ場はあるものの〔彼女がその名を知らない鳥たち〕での方が
鮮烈だし強烈。

さほどに一歩踏み変えれば、十分に{ロマンポルノ}でも通用する内容で、
最後のシークエンスと主人公の科白では黒沢清のデビュー作〔神田川淫乱戦争〕を思い出す。
ちょっと不謹慎かな?


今は「ラブドール」と言うんだね。
昔は「ダッチワイフ」の呼称だった。

実物をこの目で見たことはないけれど、
画面にも登場する膨らませて使用するタイプのそれは確かにチープさが漂う。

もっとも、だからこそ『是枝裕和』の〔空気人形〕のような傑作にも昇華されるわけで、
「魂が宿る」余白が却って存在。

それに比べて最近のリアルさはどうだろう。
劇中でもふれられている「ラブドーラー」の存在もむべなるかなと思わせる。


主人公は巻き込まれるように「ラブドール」作りに従事することになった
『哲雄(高橋一生)』。

それが縁で妻の『園子(蒼井優)』とも知り合うし、
生計も立つ。

が、自分のしている仕事をなかなか言い出せないでいるのは
後ろめたさが先にたっているから。


フライヤーのキャッチには
「夫の嘘と、妻の秘密。」や
「妻を愛して”嘘”をついた。」などが踊るけど
夫婦の関係性の描写がさほど前面に出ているわけでもなく。

寧ろ「ラブドール」と『哲雄』のかかわりの方がメインで
それに『園子』が割って入る印象。

たまさか直近で出版された『濱野ちひろ』の〔聖なるズー〕にもあるように、
人間でないモノを愛する対象として選択するケースがままあることを勘案すれば
生身の人間が人形との三角関係に懊悩する図が浮かんで来てしまう。

『哲雄』が「ラブドール」造りに没頭し過ぎることで
その状態は生み出され、しかし最後には、
思わぬカタチで一体化はするのだが・・・・。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


監督の過去作に比べると、やや軸足がぶれている感。

夫婦の愛のカタチの有りようが主題だったのか、それとも
困難を克服し理想の「ラブドール」を創り上げた男の成功譚か。

科白のはしばしを思い起こすにつけ、どうやら後者が本筋なんじゃ?と
思わぬでもない。

〔花岡青洲の妻〕宜しく夫に献身する妻の姿は、
ただ美しい心根に支えられた意図だけでもなかったようにも思えるし。