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好奇心の向くままどたばたと東奔西走するおぢさんの日記、文化部の活動報告。飲食活動履歴の「健啖部」にも是非お立ち寄り下さい

人間失格 太宰治と3人の女たち@チネチッタ川崎 2019年9月16日(月)

封切り四日目。

席数244の【CINE6】の入りは
八割ほどと盛況。

客層は主演男優または監督のファンと思われる
中高年の女性の比率が圧倒的。

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なんだやればできるんじゃん『蜷川実花』。

過剰な原色の多用や、持って回った美意識を極力抑えても、
十二分に物語を紡げている。

もっとも近似のことを他の人がやると
「※※美学」と称えられるのに、
彼女の場合はディスられることが多いのは
やはり時代かしら。


閑話休題

本作は『太宰(小栗旬)』の晩年を
(と、いっても、亡くなったのは三十八歳だけど)、
彼女なりに消化して映像化した、あくまでもフィクション。

たぶんエピソードの多くは実際のことながら
描かれている人となりについては賛否が分かれるところ。

世の中には過剰な信奉者や原理主義者がいるからね。
なのでそれを受け入れられるかどうかが評価の分岐点。

ちなみに、自分にとっては、ここでの彼にはとってもシンパシーを感じる。


いるんだよねぇ実際に、このように磁石の様に他人を惹き付ける人って。

特にある種の女性にとっては蠱惑的な磁力を発揮する。

オマケにここでは、編集者の男性にも似たような思いを抱かせている。

優柔不断で流されやすく、女性から強く出られると言い返せず
本心は違うところにあるのに諾々と従ってしまう。


一方で創作の為なら、多少の不善はなんのその。

日記や日々の会話からの勝手な引用、果ては心中未遂の
(相手の女性は死んじゃっているけど)顛末の援用迄と
人間的には如何なものか?と疑問を差し挟みたくなるほどの鬼畜っぷり。

ほんとうに駄目人間の右代表になれるくらいの凄まじさ。


しかし『太宰』も、そういった強引な女性を求め、
女性達も煮え切らない彼を必要とする共生的な関係が成立し、
それが創作の原動力ともなる。

もっとも、自身の体験を基に執筆する私小説
読者達のもっともっとの要望に応える為に作を重ねる毎に内容はエスカレーション。
作家もより過激な経験を求め、益々身を持ち崩すことになる訳だが。


評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。


太宰治』の名を聞く度に想起するのは
林忠彦』により撮られた@「ルパン」でのあの一葉。

そこでの彼は随分と無頼にも見えるけど、
果たして真の姿だったのかどうか・・・・。